19.しずおかGENTEN理事長/鈴木智子氏(3)

2013年04月22日12:00
今月の物語の主人公は・・・
NPO法人静岡県大学生大学院生ネットワークしずおかGENTEN 鈴木智子 さん

19.しずおかGENTEN理事長/鈴木智子氏(3)
1987年焼津市生まれ。2010年静岡大学教育学部卒業。大学2年より雑誌『静岡時代』の制作に携わる。現在は同誌をを発行するNPO法人静岡県大学生大学院生ネットワークしずおかGENTEN理事長。


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大学生がつくる雑誌『静岡時代』

静岡県内の学生が大学の枠を超えて研究室や部活、サークルなどをつなぐ雑誌。2005年活動開始、2006年創刊。年4回発行、発行部数1万部。県内大学および大手書店などで無料配布。

◆「静岡時代とは?」編集部ブログより http://shizuokajidai.eshizuoka.jp/c30445.html
◆ウェブ版「静岡時代」 シズオカガクセイ的新聞 http://gakuseinews.eshizuoka.jp
◆フェイスブックページ 「静岡未来」 http://www.facebook.com/shizuoka.mirai

※鈴木智子さんへのインタビューは全3回に分けて公開しています。
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|雑誌だからできること、雑誌だけではできないこと

―情報発信をするだけなら、今ではブログやツイッター、フェイスブックなど、手軽な方法があります。そのような中で、雑誌にこだわる理由は?

鈴木/紙は、カタチとして残りますよね。やっぱりそれは重要かなと。『静岡時代』は今出ているもので30号目になるのですが、創刊号から30号までの『静岡時代』が目の前に並ぶと、重みが感じられます。インターネットは便利ですし、広く使われるようになりましたが、紙媒体をつくることでなんとなく背筋が伸びるというか、みんな特別な思いがありますね。

―30号を並べてみれば、そこに歴史も見えてきますね。それにしても、30号とはすごい。

鈴木/わたし自身も、ここまでよく続いてきたなと思います(笑)。印象的なのが、わたしが『静岡時代』に参加したころ、友人の中にすでにコレクターがいたこと。毎号必ず二冊もらって、一冊は大切に保存してくれていたんです。当時、そんなに大切にしてもらえる雑誌を、自分たちが作れていることがうれしかったですし、今でも「紙のこの感じが良い」と言ってくれる学生もいます。

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―『静岡時代』が、これから目指すことは?

鈴木/初めの頃は、とにかくいい雑誌を作りたいという意識が強くありました。今は、雑誌と地域がつながることによって、雑誌だけではできないことで、私たちにできることがあるんじゃないかと思っています。そのためには、より外に向けた情報発信が重要なのですが、発信の内容には二種類あると思っています。学生自身が活動内容や自分たちの考えを発信することと、組織の活動の全体像を組み立てつつきちんと外部の方々に対して説明していくこと。特に後者は、わたしがもっとしっかりと担うべき役目だなあと感じています。

―外に向けた情報発信としては、「静岡未来」というFacebookページもその一環ですよね。

鈴木/そうですね。「静岡未来」は、昨年、静岡県と一緒に立ち上げたページです。県からのお知らせとともに、大学生活の情報や静岡県内で学ぶ人々の紹介、研究室情報や就活情報まで取りあげ、特に若い世代が社会とつながるきっかけとなるコミュニティを目指しています。また、「静岡未来」ページのタイムラインには、静岡県の歴史も含まれており、これには「過去・現在を知ることで未来を私たちひとりひとりが考えていく」という想いを込めています。
学生や大学、地域にまつわる「いいね!」を共有することで、学生が地域を見つめる目を変えたり、何か発見してもらいたいんです。地域の方が学生を見つめる目にも、同じことが言えると思います。

facebookページ「静岡未来」
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―ブログの活用も始まりましたね。

鈴木/今年に入り、eしずおかブログで『静岡時代』のWEB版、「シズオカガクセイ的新聞」を始めました。キーワードは、ずばり「新聞」。これまで紙の雑誌でしか読めなかった記事を、バックナンバー、最新号ともに広く皆さんにご覧頂けるようになりました。ここだけの独自企画も充実させていく予定です。WEB版だからこそのさまざまな展開をしていけますが、特に「時事」というカテゴリーを盛り上げたいと思っています。例えば、日常的に耳に入っていて気になるけどそこまで突っ込んで考えていないことや、よく分からないこと、またもっと知りたいと思う話題を厳選して、教授をはじめ静岡県の有識者にお話を伺ってみたいですね。学生だけでなく、見ていただく皆さんと「学問する」ことができる、そんなサイトを目指しています。

eしずおかブログ「静岡時代 シズオカガクセイ的新聞」19.しずおかGENTEN理事長/鈴木智子氏(3)

|表現の機会がないなら、自分で作って外を向くしかない

―鈴木さんが『静岡時代』に関わるようになって5年が経ちます。学生さんたちに変化はありましたか。それとも変わってない?

鈴木/どうでしょうか。学生それぞれに違いますし一概には言えませんが・・・。とりわけ就活の話題で言えば、それで悩むこと自体はあまり変わっていない気がしますが、就活に向き合う意識は少し変わってきているようにも思います。自分がどういう場所で働くのが本当に幸せなのかということを具体的に考える人が多いなと感じます。

―編集部では、どんな話題が多いのですか。

鈴木/「いまどんな勉強している?」とか「どんな授業をとってるの?」とか、他大学、他学部の学生同士が毎週顔を合わせるので、自然と情報交換していることも多いです。

―みなさん、まじめですね。

鈴木/もちろん、そればかりではないんですけどね。どうしようもない話で盛り上がったりするのも大好きですよ。ただどんな話題でも面白がれる人が集まっていることは確かだと思いますね。

―『静岡時代』の編集部には、一人で参加する人が多いのですか。

鈴木/はい。自分一人だけで問い合わせをして入ってきてくれる人が多いですね。友人に誘われて参加する人もいますが、今は少数ですね。

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―最近の若者は内向き思考だとか保守的だとか、よく聞かれる報道に対して思うことは?

鈴木/確かにそうだなと思うこともあります。その反面でわたしが感じるのは、内向きというよりは、自分を表現する機会がなかなかないことがそう映るのでは、ということ。社会人も実際に学生と触れ合う機会の少ない人が多いように思えますし、両者の接点がないこともあって、余計に学生が内向きに見えるのではと思います。

―「外向き」になれる場面がない、と。

鈴木/そうですね。また、外向きを意識させる場というのもあまりなかったんじゃないかと思います。昨年あるイベントで、静岡大学教育学部の学生サークルが地域の子どもたちに理科の実験をしたり、音楽や美術などのワークショップを開催しているのに出会いました。イベント後、サークルの代表の方がこんな話をしてくれたんです。
「これから自分たちは先生になって、社会に出て、子どもたちに教えていく立場にある。けれど、大学の外に出る機会がないまま卒業を迎えてしまうことに不安を感じていた。機会がないのなら、自分たちで大学の外と交流できる場を作ってしまおうと思い、そこからワークショップ開催という形で外のイベントに関わるようになった」と。
わたしはその言葉に納得しました。学生は、きっかけさえあれば行動する力は持っています。学生が内向きに見えるとすれば、そのきっかけに出会えていないという要因もあると思います。

|ミッション達成のために、一目置かれる『静岡時代』に

―鈴木さんからみて、学生のどんなところが魅力ですか?

鈴木/人と一緒に何かを作るということに楽しみを見出し、それを原動力にしていけるのは良いなあと思います。一人ひとり責任感もありますし、他人に対してだけでなく、自分自身についても客観的な目線をもっている。だからこそ思いやりのある人たちが多いなと思います。

―ぼくは面接などの限られた接点しかありませんが、そのような印象を受けています。それに、やさしさも感じますね。そのような学生から、『静岡時代』はどんなイメージをもたれているのですか。

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鈴木/ある号の配布中に、編集部員が読者の学生に「エリートの雑誌だよね」と言われたことがあるんです。読者にはそう映るんだ、とも思いましたが、それは意識的にも無意識的にもそう思ってもらいたいというこちらの意図もあったでしょうし、またそう思えるものを求められてきたという面もあると思います。

―それはどういうこと?

鈴木/「大学社会と地域社会をつなげる」というミッションを遂行するためには、まず情報を集めて発信し、それを受け取ってもらいやすい環境をつくらなくてはなりません。『静岡時代』をきっかけにその仕組みを築いていくことで、やっとスタートラインに立てるという思いでいます。そのためにはやはり一目置かれるような媒体を学生主体でつくれていないと難しい。だから、「静岡に学生がつくるスゴイ雑誌がある」と思ってもらえるのはとても嬉しいことです。編集部には、いかにもエリートというタイプの人はいないんですけどね。

―情報発信をする媒体と、それを流通させる環境をつくると。

鈴木/わたしたちは、静岡の大学社会を代表する媒体を目指しています。一方で、それは『静岡時代』編集部のものではなく、静岡県の大学生や地域社会の皆さんがアクセスしやすいものでなくてはならない。そのために、ネットでの情報発信も試行錯誤しています。その一つとして静岡県と一緒に始めたのがfacebookページの「静岡未来」。静岡の大学生が県の広報の一端を担わせてもらえるのは、行政としては本当にすごい試みだと思います。県が若い世代にそれだけ期待を寄せてくれているんだと感じられましたし、私たち組織にとっても大きな契機でした。

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|大学生の姿、大学という場所を、もっと開かれたものにしたい

―では最後に、静岡の大学社会を代表する媒体として実現したいことをお聞きします。

鈴木/わたしもそうでしたが、静岡県内の大学に進学するのは県内高校出身の人が多いんです。強い志望動機があって静岡の大学を選んだわけではなく、センター試験の結果や両親の希望、「なんとなく」で地元の大学に進学する。一方、県外出身の学生が静岡の大学に進学するのは第二志望の結果であって、静岡の大学に対するイメージは本人にとっても漠然としていることがあります。

―その「なんとなく」や漠然とした感じを、『静岡時代』によって変える?

鈴木/4年間の大学生活はあっという間です。静岡の大学で過ごす4年間を、学生自身が主体的にもっと面白くできたら、またそれに地域が関わっていることに実感を持てたら、これは静岡県だけでなく県内の大学社会や学生にとっての大きな力になると思います。それを示す次のステップとして、いま考えている大きな計画は2つあります。それは次代の大学生となる県内の高校生に向けて、高校生版の雑誌『静岡時代』をつくり、手に取ってもらうこと。もうひとつは、大学を会場とし、地域の皆さんや学生、先生が集まって地域のこれからについて考える「カレッジ・サミット」の開催です。

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―高校生を読者とした『静岡時代』ということですか。

鈴木/『静岡時代』には、「大学生のいま」が詰まっています。私が高校生の頃は、大学に関するイメージはウェブサイトや大学のパンフレットの範囲でしかなかった。だから、まさにいま県内の大学がどんな様子なのかを高校生の皆さんに見てもらえたら、ちょっと先輩の立場として伝えられることがあるんじゃないのかな。それを面白いなと思って県内の大学に進学してくれたら、地域にとっても良いことだと思うんですよね。実際、高校生のときに偶然『静岡時代』に出会った人で、県内大学に進学して編集部に入った人もいるので、これは自信にもなっています。

―もう一つの「カレッジ・サミット」は、どのような考えですか?

鈴木/これは、以前、「静岡県をもっと魅力的にするための構想を考える」という内容のラジオ番組に編集部が出させていただいたときに出てきた案でもあります。大学を地域にとってもっと開かれた場所にして、まちの皆で地域に関する議論をしていく。そこで出たアイデアは行政に活かすことができるかもしれませんし、企業や大学の研究にとっても有益かもしれない。様々な人・情報の交流から、化学反応で新しい何かが生まれる可能性のある場を私たちの手でつくっていけないかなと、今まさに検討しているところなんです。

―なるほど。これからの展開に注目しています。今日はありがとうございました。

鈴木/ありがとうございました。

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(了)

※鈴木智子さんへのインタビューは全3回に分けて公開しています。
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Posted by eしずおかコラム at 2013年04月22日12:00 | 19.鈴木智子さん
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