22.ミスター富士山・實川欣伸氏(3)

2013年08月26日12:00
今月の物語の主人公は・・・
「ミスター富士山」 實川 欣伸(じつかわよしのぶ) さん

22.ミスター富士山・實川欣伸氏(3)實川欣伸(じつかわ よしのぶ)。登山家。1943年神奈川県出身、沼津市在住。1985年に初めて富士山に登頂して以来登頂回数を伸ばし、2010年には登頂1000回を達成。翌2011年には登頂1111回達成の偉業を達成し、日本山岳会長特別表彰を受ける。不眠不休による富士山四登山道連続登頂、8連続登頂、 日本橋を始点とした登頂、下田を始点として伊豆横断しての登頂、富士山を含めた3000m峰29座を29日間で完歩等、常に新しいことに挑戦し続けている。その後も記録を伸ばし、年間登頂5年連続200回以上、登頂回数は累計で1400回を超す。日本山岳会会員。


※インタビューの聞き手は、(株)しずおかオンライン代表/海野尚史さんです。
※インタビューは2013年7月25日に富士山富士宮口6合目宝永山荘にて行いました。(撮影/森 奈保)
※このインタビューは、全3回のうちの第3回目です。 ≫第1回を読む  ≫第2回を読む


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|思い出深いのは、84歳のすごいおばあちゃんですね(笑)

―實川さんの本や資料を読み、もうひとつ大記録を発見しました。それは、富士山に1400回以上も登りながら一度として大きな事故やトラブルに巻き込まれていないことです。

實川/それは、気が小さいからですよ。危険な場面には何度か遭遇しましたが、幸いなことに大きな事故はやってない。何度も登っていますから、風や雲の様子にカラダは敏感です。山頂近くまで達していても、カラダが嫌がったらUターン。危険を感じたら下山する、を徹底しているから。それから、そもそも強風の日や天候が悪い日など「富士山が嫌だという日」には登りません。

―記録には残りませんが、登頂を前に引き返した回数も多いということですね。

實川/そうです。どんなにベテランでも、山頂が見えていたら登りたくなってしまう。でも、富士山は、登るよりも下りる時が危ないんですよ。特に強風が危ない。

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―では、富士登山で出会った思い出深い人というのは?

實川/いろんな人に出会ったけど、愛知県から一人で来た84歳のおばあちゃんがいてね。このおばあちゃんは4泊5日で富士山登頂を目指していて。毎日会うたびに登山道で休憩していて、歩いているところを見たことがない(笑)。6合目から7合目、8合目と、毎日山小屋に1泊しながら、5日かけて富士山を登りきった。すごいおばあちゃんですよ。

―70歳になった今の目標を聞かせてください。

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實川/これまで7大陸最高峰のうち6座登頂していて、残すはエベレスト。来年5月、そのエベレストを無酸素で連続2登頂することがいまの最大の目標です。

―エベレスト登頂だけでも偉業ですが、無酸素で、しかも連続2登頂とは。實川さんらしい大きな目標ですね。では、ミスター富士山として、富士登山の今後の目標は?

實川/2230(ふじさん)回は達成したい。富士山は、ぼくにとって特別な山ですから。

|富士山は、ぼくにとって人生そのものです

―あらためて、富士山の魅力を教えてください。

實川/富士山は日本一の山ということもありますが、何度登っても飽きることがないですよ。朝焼けから御来光までは感動的ですし、雲海や夕焼けも毎日違います。夜空には流れ星も見える。もちろん季節によっても違うドラマに出会えるわけで、一度として同じ景色に出会うことはないです。
それから、驚くほど多くの人との出会いがあるのも富士山の魅力。こんなぼくが三浦雄一郎さんや皇太子殿下とお話しできたのも、富士山がきっかけです。それに、中国・韓国・台湾をはじめアジアやヨーロッパ、アラブなど、世界中から登山者が訪れる。これだけいろいろな人が登りたいと憧れる山は、世界の中でも富士山だけじゃないですか。

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―世界遺産に登録されたことで、日本の富士山から世界の富士山になっていくのでしょうね。富士登山初心者へのアドバイスをいただけますか。

實川/富士山に登る人の9割は、山は嫌いだけど富士山には登りたいという人。ですから山の経験も体力もない方が多い。まずは、天気のいい日を選ぶこと。御来光を見たい人は、山小屋を利用して1泊2日の無理のない計画を立てること。富士山に畏敬の念を持つこと。最後に、当たり前ですが登山のルールを守って登ってください。

―實川さんにとって、富士山とは?

實川/いまのぼくにとって富士山は空気のような存在であり、生活の一部。なくてはならない、人生そのものです。

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―これから登ってみたい山はありますか?

實川/開聞岳(かいもんだけ・鹿児島)や由布岳(ゆふだけ・大分)など、美しくて変化に富んだ風景と厳しさも併せもった山に登りたいですね。九州や四国に、魅力的な山がたくさんあります。

―まだまだゆっくりとはできないようですね。今日は記録更新の真っ最中にお時間をいただき、ありがとうございました。来年のエベレスト無事登頂を祈っています。それから、富士山登頂2230回の達成も!

實川/こちらこそありがとうございました。午後6時か、これから2登目に行こうかな・・・(笑)。


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五合目から、取材場所に向かって歩き出す海野さん


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富士宮口六合目の山小屋「宝永山荘」。取材はここで行われた
  
 (完)



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Posted by eしずおかコラム at 2013年08月26日12:00 | 22.實川欣伸さん
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