23.作業療法士・菅原洋平氏(2)

2013年09月23日12:00
今月の物語の主人公は・・・
作業療法士 菅原洋平さん

23.作業療法士・菅原洋平氏(2)菅原洋平(すがわら・ようへい)。青森県生まれ、静岡県育ち。作業療法士。ユークロニア株式会社代表。
 国際医療福祉大学卒業後、作業療法士免許を取得。民間病院精神科勤務後、国立病院機構にて、脳のリハビリテーションに従事。脳の回復には、睡眠が重要であることに着目して臨床実践をする。また、障害者の復職支援を行う中で予防の必要性を強く意識する。
 病気予防を面白く魅力的にするため生体リズムを活用して企業の業績を高めるビジネスプランを作成し、SOHOしずおかビジネスプランコンテストにて最優秀賞受賞。その後、ユークロニア株式会社を設立。企業を対象に生体リズムや脳の仕組みを使った人材開発を行う。著書に、『あなたの人生を変える睡眠の法則』(自由国民社)、『やる気がでる!超睡眠法』(宝島社)、『誰でもできる!「睡眠の法則」超活用法』(自由国民社)、『「いつも眠い~」がなくなる 快眠の3法則』(メディアファクトリー)。

◆会社HP ユークロニア株式会社
◆ブログ 作業療法士 菅原洋平の生活術
◆【日刊いーしず】連載 「脳の仕組みを知ればもっとうまくいく! クセ活用術」

※インタビューの聞き手は、(株)しずおかオンライン代表/海野尚史さんです。
※この記事は、全3回のインタビューのうちの2回目です。 ≫1回目はこちら


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|睡眠は目的ではない。起きている間にいかに効率を上げるか

―菅原さんには多くの著作がありますね。睡眠をテーマにした従来の本には「いかに快適に眠るか」という内容が多いようですが、菅原さんの本は違いますね。

菅原/わたしの本は、眠るための本でも、眠れない人のための本でもありません。わたしは作業療法士ですから、眠れない原因を突き止めて診断する立場にはありません。それは医師の仕事。その人がもっと自分の能力を引き出すために何が必要なのか、何ができるのか。睡眠という道具を使って、それを支援するのがわたしの仕事です。

―睡眠そのものは、目的ではないんですね。パフォーマンスを上げるための手段。

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菅原/作業療法士は、出会った人のパフォーマンスを上げることしか考えていません。その人のやる気を引き出して、能力を引き出すことだけを考えている人種ですから、そもそもぐっすり寝かせようという発想はないんです。寝るために生きるわけではないですからね。

―なるほど。SOHOしずおかのビジネスプランコンテストでグランプリを受賞しましたが、一般の人の反応に手応えを感じましたか。

菅原/そうですね。

―そして、起業を決意した。

菅原/勤務しながら約1年間の準備期間を経て、起業しました。でも、まったく新しいビジネスで、前例も事例もないし、何の分野かもうまく説明できない状態でした。

―どこにマーケットがあるかもわからない。

菅原/それで、まずはデータをとらなければ話にならないと思い、SOHOしずおかさんに協力していただき、近隣の会社員100人に睡眠についてのアンケートをとってみました。

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|仮説を検証するための調査と実証、そして起業準備と執筆活動

―アンケートの対象は、睡眠に悩んでいる人たちですか?

菅原/いえ、普通に働いている会社員100人です。この人たちに、体調不良に関するチェック項目に答えてもらいました。その結果、「肩こりがある」とか「頭痛がする」、「集中力がない」などの人ももちろんいましたが、約4割の人が「やる気がない」という項目にチェックをしていたことに驚きました。これほどみんなやる気がないのか、と。

普通に働いている元気そうな会社員100人中40人が、「やる気がない」。

菅原/これらは“プレゼンティーイズム”と呼ぶんです。会社を休んではいないけど体調が悪い。頭痛などでも医者にいくほどでもないし、出勤はできる。そんな状態。ということは、出勤していて普通に給与をもらっているにもかかわらず、パフォーマンスは低いということになる。わたしたちは、それをコストだと考えるわけです。このコストを改善できれば、全体の生産性は改善されるはずだと。

―目に見えない損失。企業にとっては、ほうっておけない状況ですね。

菅原/アンケートの回答者一人ひとりに、毎月1回、4ヶ月間にわたって、「睡眠新聞」というニュースレターを個別に作って、そこにメッセージを載せて送りました。これが、後になって一般の人にわかりやすく伝える文章を書く練習になりました。そして4ヶ月後、同じアンケートにもう一度答えていただき、“体調が改善された”という結果が導かれるかどうかを実験しました。

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―「睡眠新聞」では、どんなメッセージを送った?

菅原/例えば、「4・6・11の法則」とか、「夕方には絶対に寝るな」とか「正しい二度寝の方法」「正しい徹夜の方法」などです。すると、すべての項目で改善がみられました。「やる気がない」という項目は40%から17%に、大きく減りました。

―それはすごい、菅原さんの仮説が実証されたわけですね。

菅原/改善されたというデータはとれましたが、今度は、すべての項目で改善がみられるなんて、ちょっとできすぎだなと思った。ただ、直接面談や診断をしたわけでも、投薬もしていないのに、本人が調子が良くなったと自覚していることには間違いない。そこにはなにかあるはず。次に、この既成事実を持って半年ほどいろいろなところに話に行き、週末は起業講座に参加するために東京に通いました。

―起業して、すぐに著書『あなたの人生を変える睡眠の法則』(自由国民社)もでました。本を書こうと思ったのは?

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菅原/ビジネスプラン・コンテストのある審査員の方から「あなたは本を書きなさい」と薦められたことがきっかけです。それで、出版企画書を作って出版社に持ち込んだりしていた。実は、そのころは、一般の人に向けて本を書くということが、ビジネスにどうプラスになるのかまったくイメージがわかなかった。医療業界では、一般書はうさんくさいものだと思われていましたし。でも、睡眠新聞での実証データがあったので、わかりやすく説明して、読んでくれた人の体調が改善されるなら、そのことには意味があるなと。それが動機になりました。

―本の内容は、最初からいまのようなものだったのですか?

菅原/いえいえ、わたしの企画は、メンタルヘルスの教材本みたいな内容でした。出版企画書を持ち込んだ出版社の中で、自由国民社の編集者が声をかけてくれたのですが、「企画は面白い。ただし、“メンタルヘルスの教材本”が書店のどこに置かれるかわかってますか?一番奥の片隅ですよ。菅原さんが書きたい内容は、そんな本じゃないはずです」と言われて、全面的に書き直しました。そんなこともあって、たまたま起業のタイミングで出版できたのです。

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|医学の世界の外から、一般の人の日常生活を改善する

―病気予防に取り組む、という大きな目的は変わりませんが、起業の前と後では、仕事の中身は随分と変わったんじゃないですか。

菅原/そうですね。まず、患者さんと一緒にいない状態が一番大きな違いですね。人のカラダに触らない日々に慣れるまでは、不安でたまりませんでした。いま会う人たちはみんな元気ですし、自分はここにいていいのか、と考えてしまったり。

―それでどうしたのですか。

菅原/作業療法士は、医師の指示のもとでしか医療行為はできないと法律で決まっているわけです。「睡眠に悩んでいる方、来てください」と宣伝できないし、診断することもできません。でも、教室ならできるだろうと考えた。わたしはあなたのことをよく知らないけど、気に入ったら実践してみてください、と。それで、体調が改善される人が増えればいいなと。教室は、月1回の開催。90分講義して、2時間の質疑応答。ここで、いままで気になっていたことをすべて解消して帰ってください、と言っていました。

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―教室では、どんな指導をしていた?

菅原/最初は明確な方法論があるわけではなかったので、わたしの考えの基本にある、例えば“4・6・11の法則”などから教えました。起床から4時間以内に光を浴びて、6時間後に目を閉じて、11時間後に姿勢をよくするとパフォーマンスが上がる、というものです。

―以前からわかっていたことなんですか?

菅原/医学界では以前からわかっていたのですが、一般の人に伝えることは医学界の仕事ではないし、適当に伝えるのはやってはいけないこととされています。きちんと理解していただかないと、誤解を招くことになりますから。○○の法則なんて作ってはダメなんです。でも、一般の人のライフスタイルに取り入れていただくには、医学界と真逆の考え方が必要になる。睡眠教室で質疑応答を重ねる中で、どんな伝え方をすれば理解していただきやすいのか、すこしずつわかってきて“4・6・11の法則”にたどり着きました。ここまでくるのに随分時間がかかりました。

―菅原さんのいまの仕事のスタイルを教えていただけますか。

菅原/週の半分は、東京の大手企業に出向いて、睡眠研修の講師をしています。残りの時間は、主に執筆活動ですね。

―著書は好評ですね。

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菅原/1冊目を多くの人に読んでいただけたことで、本そのものが治療ツールになり得ることがわかりました。

―本だけでなく、ブログやツィッター、フェイスブックなどのソーシャルメディアでも情報発信も活発にされていますね。

菅原/そうですね。ツィッターは、問題提起と構造の説明、解決策を140文字でまとめることを課題としています。それをフェイスブックに反映して、詳しいことはブログで説明しています。ブログには、「睡眠」「脳」「子育て」「男女」などのカテゴリーを作って、そこにコンテンツがストックされて、それらが本としてまとめられる材料になるようにしています。

―ブログを書くのはいつですか?

菅原/朝いちばんです。根拠を調べることに時間をかけています。時間としては1時間ほどでしょうか。

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Posted by eしずおかコラム at 2013年09月23日12:00 | 23.菅原洋平さん
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