26.静岡シネ・ギャラリー副支配人/海野氏、川口氏(2)

2013年12月23日12:00
今月の物語の主人公は・・・
映画館「静岡シネ・ギャラリー」川口さん、海野さん

26.静岡シネ・ギャラリー副支配人/海野氏、川口氏(2)
左が川口さん、右が海野さん


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※インタビューの聞き手は、(株)しずおかオンライン代表・海野尚史さんです。
※この記事は、全2回のインタビューのうちの2回目です。1回目の記事はこちら 


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|開館した2003年は、ミニシアターブームが終わる時代でした

-今年は、静岡シネ・ギャラリーがオープンして10年目の節目だそうですね。

川口・海野農/はい。2003年12月のオープンから、ちょうど10周年を迎えました。

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-おめでとうございます。どんな10年間でしたか。

海野農/観客の動員では、厳しい10年でした。ミニシアターのブームが終わってからのスタートでしたし、ミニシアターとしても後発でしたから。

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川口/ミニシアターの全盛期は、70年代から80年代後半にかけてなんです。そのころは、一般の劇場にかからない作品を上映するシネマテークの活動が盛んでした。ユーロスペースや渋谷周辺の単館系劇場が賑わっていたころです。ぼくたちは、そもそもミニシアターが賑わっていた時代を経験していないんです。

-劇場運営においては、苦労した10年だった。

川口/それでも、いまになって思えば、オープン当時は、いまよりももっとお客様が入っていましたね。

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海野農/ぼくや川口が学生の頃は、ミニシアターで映画を観ることはちょっとかっこいいことだと思われていた時代だったんです。映画「バッファロー66」や「アメリ」を観たあとは、「アレを観てきたよ」って、いまでいう“ドヤ顔”で友人に報告したり。当時は、ミニシアター系の映画に限らず、サブカルという文化が残っていた最後の時代。静岡シネ・ギャラリーのオープンのタイミングと、サブカル文化が消滅していく時期とが重なったことが、観客動員の難しさにつながっていると感じています。

-おもしろい映画が少なくなったせいもある?

川口/いえ、映画のクオリティは、決して下がっていないです。

海野農/「最近の映画はつまらなくなった」という発言を耳にすることがありますが、ぼくはまったくそうは思いません。おもしろい映画はたくさんあるのに、観ていないだけ。いまは家の中で、観たい時に、観たい映画を視聴できる時代です。それに、ネット動画を始めとして動画コンテンツも格段に増えています。でも、やっぱりおもしろいコンテンツが揃っている映画の力は強いですよ。わざわざ劇場まで観にくる人が減ってきているとはいえ、今後については楽観しています。


|好きな映画作品と、楽しみ方

-おふたりの好きな映画について聞かせてください。

海野農/ぼくは、ビクトル・エリセ監督の作品が好きです。「ミツバチのささやき」や「エル・スール」などですね。多くの芸術作品は、送り手と受け手が対になって成立していますよね。小説であれば書く人と読む人、絵画であれば描く人と見る人、音楽は演奏する人と聞く人、そして演劇であれば演じる人と観劇する人。映画の場合は、俳優がいるので演劇的な要素もありますし、脚本があるので小説的ともいえますが、つきつめれば監督のもの。演技もセリフも監督が決めて、それをカメラを通してえがく作品が映画です。観客は、監督がカメラを通してみている世界を、同じ目線で体験している。そこがほかの芸術と映画の違い。それだけに、カメラの中の目線と自分の感覚がズレてしまうと、「この作品は自分とは違う」と感じてしまいます。

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ぼくがビクトル・エリセ監督の作品が好きな理由は、「ミツバチのささやき」や「エル・スール」を観た時に、自分の目線とピタリと一致したからです。「あぁ、これは自分のための映画だ。ビクトル・エリセは、ぼくのことを知っている」、そう思いました。だから、ぼくにとっては、特別な作品なんです。


-川口さんはいかがですか。

川口/ぼくは、ケン・ローチ監督の「ケス」という作品です。鷹匠の少年の成長物語。ケン・ローチ監督の作品の登場人物は、いつも社会の底辺で生きる人たち、社会的弱者が多いんです。「ケス」の主人公の少年もそうですし、最近上映された「天使の分け前」という作品も同様。弱い人たちの視点を忘れないところに魅かれます。ぼくたちも映画館業界の弱者なので、魅かれるのかな(笑)。

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-これから上映する作品の中から、【日刊いーしず】の読者のみなさんに、オススメの映画を教えていただけますか。

川口/ぼくは「楽隊のうさぎ」という映画をおすすめたいです。「楽隊のうさぎ」は、浜松市のミニシアター「シネマイーラ」さんの呼びかけで制作されて、全国のミニシアターの上映網が応援して実現した作品です。主人公は、静岡市の中学生。浜松周辺で撮影され、エキストラも撮影も街ぐるみで応援して作られました。ぼくらのような地方の独立系興行館が連携して、興行して、次の世代の映画人を育てていこうという「コミュニティシネマ宣言」という考え方から実現した映画なんです。作品としてもすばらしいのですが、それ以上に、映画が作られたスキームを応援したいです。

-地元で作られた映画なんですね。

川口/はい。もうひとつ選ぶとしたら、ニューヨーク在住40年になる日本人現代芸術家夫婦のドキュメンタリー映画「キューティー&ボクサー』にも注目しています。個人的には、この作品はアカデミー賞を獲るのではないかと思っています。来年はソチ・オリンピックの関係でアカデミー賞は3月1日に発表になります。なので、東京では、今月から上映が始まりますが、うちではアカデミー賞の日程に会わせて、2月22日から上映することにしました。もし、アカデミー賞を受賞できたら、この作品を知らなかった人や、普段は劇場で観る機会の少ない人も、きっと来ていただけるんじゃないかと、いまから楽しみにしています。

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-それは楽しみですね。

海野農/今シーズンは面白い作品がたくさんありまから、選ぶのは難しいです。ひとつあげるとしたら、先ほどお話ししたビクトル・エリセ監督が参加しているオムニバス映画「ポルトガル、ここに誕生す」という作品もおすすめです。ビクトル・エリセ監督は寡作ですから、新しい作品を観ることができること自体が幸せです。

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-最後にメッセージをいただけますか。

海野農/静岡シネ・ギャラリーは、街中のアクセスのいい場所にあります。ショッピングの途中や待ち合せ場所として、気軽に利用してください。入りにくい印象があるかもしれませんが、一人で観に来る女性も多いです。映画のチラシがおいてあるので、気になる作品があったら観ていただけるとうれしいです。


川口/上映作品数が多いので、全部を見てくださいとはいいません。気に入った作品を見ていただければそれでいいです。「映画館のある街に暮らすのって、いいよね」「そういえば、駅の近くにシネ・ギャラリーって映画館があるよね」と若い人に覚えていただけるようになれたらうれしいです。

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Posted by eしずおかコラム at 2013年12月23日12:00 | 26.川口さん、海野さん
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