28.静岡音楽館AOI学芸員/小林 旬氏(1)

2014年03月06日12:00
今月の物語の主人公は・・・
静岡音楽館AOI学芸員・小林 旬(こばやし じゅん)さん

28.静岡音楽館AOI学芸員/小林 旬氏(1)  こばやしじゅん。京都生まれ。静岡音楽館AOI学芸員。これまで約600曲の曲目解説を執筆。また静岡他の民俗芸能を調査・研究。D.マッケヴィット:《トランスルーセンス》(静岡、東京。2002)、M.ラヴェル:《ボレロ》(熊本。2003)、志田笙子:《四季》(ケルン。2004)、F.ガスパリーニ:歌劇《ハムレット》(静岡。2007)など演出。

 音楽とおはなし《ピーターとおおかみ》(静岡音楽館AOI。1999、トミオカホワイト美術館(新潟)2000、静岡県立美術館。2001、水戸芸術館(茨城)、シンフォニア岩国(山口)2002、アクトシティ浜松、阿南市文化会館(徳島)、神奈川県立音楽堂。2003)、山下洋輔:ヴァイオリン・ソナタ《Chasin’ The Phase》(静岡音楽館AOI委嘱作品)(2004)、CD「野平一郎 plays J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集」(2007)、展覧会「ジョン・ケージ 版画展 −偶然の詩学−」(静岡市美術館。2012)などをプロデュース。
静岡音楽館AOIホームページ


※聞き手は、(株)しずおかオンライン代表/海野尚史さんです。
※この記事は、全3回のインタビューのうちの1回目です。
≫インタビュー2回目はこちら
≫インタビュー3回目はこちら

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 クラシック音楽と聞いて「自分には遠い存在」「興味はあるけど難しすぎて」と連想してしまう方は多いのではないでしょうか。その一方で、きっかけがあれば一度はクラシックのコンサートを生で聴いてみたい、そんなあこがれの気持ちも心のどこかにあるのでは。
 今回のインタビューノートでは、2015年に20周年を迎える静岡音楽館AOIの学芸員小林 旬さんにクラシック音楽の魅力と楽しみ方についてお聞きしました。
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28.静岡音楽館AOI学芸員/小林 旬氏(1)


|市民の声を聞く音楽館

-静岡音楽館AOIは、来年2015年で20周年を迎えますね。小林さんは静岡音楽館AOIの事業を統括されているとお聞きしたのですが、具体的にはどんなお仕事をされているのですか。

小林/静岡音楽館AOIのプロデューサーである芸術監督を支えて、プロジェクトを具現化していくことがわたしの仕事です。主催する事業全体の統轄だけでなく施設の管理にも目を配っています。

-事業の収支も?

小林/そうですね、日々の売上とか、伝票類のチェックとか…。

-すべてを目を通すのですか。

小林/そうです。ほとんど全部見ています。

28.静岡音楽館AOI学芸員/小林 旬氏(1)

-コンサートの企画も?

小林/はい。コンサートの出演者や公演プログラムの選定は、芸術監督の野平一郎さんが全体の方針を決めます。芸術監督以外に3名の企画会議委員がいて、芸術監督と一緒にAOIならではのコンサートを企画しています。

-企画会議の委員というのは、国際的に活躍している指揮者の沼尻竜典さん、ギタリストの福田進一さん、そして伝統芸能や伝統音楽に詳しい演出家の田村博巳さんの3名ですか。。

小林/そうです。3名にそれぞれの専門分野を活かした企画を提案していただいています。

-静岡音楽館AOIは静岡市の施設として運営していますが、市民の声はどのように反映されているんですか?

28.静岡音楽館AOI学芸員/小林 旬氏(1)


小林/
企画会議のほかに市民会議という組織があります。市民会議は、市内に在籍、または静岡にゆかりのある学識経験者や市内中学校の先生、それからSPAC芸術監督の宮城聡さんなど8名で構成されていて、この市民会議を通じて市民の意向を企画に反映するように心がけています。

-なるほど。3名の企画会議と8名の市民会議を芸術監督が束ねながら、プログラムを作っているわけですね。

小林/はい。それから、コンサートの際のアンケートは、スタッフだけでなく芸術監督も1枚1枚すべてに目を通しています。


|音楽家を育て、聴き手を育てていくのが私たちの役目です

-コンサートホールは全国各地にありますが、“AOIらしさ”のようなものはあるのですか。

小林/そうですね、芸術監督の野平さんには重点方針が三つあります。一つは、若い音楽家の登用、そして若い聴衆の育成です。二つ目が、現代音楽の支援。三つ目が、静岡の音楽家の開拓と支援、静岡独自のオリジナリティの発信です。この三つの方針を軸にして、AOIの活動は組み立てられています。

-わたしたちに一番身近な主催コンサートにも“AOIらしさ”はあるのですか。

小林/AOIのホールは、618席という中規模の大きさ。基本的にクラシックの室内楽に適した設計になっており、プログラムも室内楽が中心です。でも、一年間に一回くらいは50人ほどの規模のオーケストラやジャズ、雅楽などの伝統音楽、日本の民俗芸能もやりますよ。

-室内楽というのは?

小林/複数の、10人くらいまでの奏者で編成されるアンサンブルのための楽曲です。一般的にクラシック音楽と聞いてイメージされるのは、オーケストラの楽曲が多いのではないでしょうか。皆さんが知っているオーケストラは80人編成ぐらいの規模。でも、静岡音楽館AOIのステージには最大50人くらいまでの演奏者しか上がれないので、ここでみなさんが聴きなじんでいる曲を演奏することは少ないかもしれませんね。

28.静岡音楽館AOI学芸員/小林 旬氏(1)


-そうだったんですね。

小林/もうひとつ、常に質の高い音楽を提供することも、AOIのプログラムのポリシーです。国際的に活躍している日本人の演奏家や、世界のトップの音楽家を中心に、時には地元静岡の若い音楽家なども起用して、バランスよく良質な音楽を提供するように組まれています。

-そのほかにAOIでは、どんな活動を?

小林/事業の柱であるコンサートシリーズが、年間で12~15本ほどあります。今年度と来年度は、16本開催の予定です。そのほか、若い方を支援する取り組みとして、新進の若い音楽家の発掘と育成を目的として「静岡の名手たち」オーディションを続けています。

-子どもたちのための講座も開いているとお聞きしました。

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小林/「子どものための音楽ひろば」という講座です。50人の受講生を集めて、年間24回開催しています。第一線で活躍している音楽家たちが講師となって、いろいろな体験させるワークショップのような講座です。子どもたちがホンモノに触れて、豊かな感性を養うことを目的としています。それら以外にも、「ピアニストのためのアンサンブル講座」や、学芸員による講演会、地域の生涯学習センターで講演することもあります。すべてを合わせると、事業数は50ほどですね。

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Posted by eしずおかコラム at 2014年03月06日12:00 | 28.小林旬さん
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