31.常葉大学経営学部教授/大久保あかね氏(3)

2014年07月24日12:00
今月の物語の主人公は・・・
常葉大学 経営学部教授・大久保あかね(おおくぼあかね)さん

31.常葉大学経営学部教授/大久保あかね氏(3)

 1963年名古屋生まれ。2006年より富士常葉大学(現:常葉大学)に在職。

常葉大学


※聞き手は、(株)しずおかオンライン代表/海野尚史さんです。
※この記事は、全3回のインタビューのうちの3回目です。
≫大久保さんのプロフィールと1回目のインタビューはこちら
≫インタビュー2回目はこちら


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|出張ビジネスマンを観光客に変えよう!

大久保/実は、富士市内の宿泊施設の稼働率は、とても高いのです。出張などのビジネス客で、十分に需要をまかなえています。

-なるほど。

大久保/だから、あえて観光客に向けて積極的にPRする必要はないという雰囲気があります。ビジネスホテルは観光客向きではないというイメージもあるようです。

-部屋が空いてなければ、対応もできませんからね。

大久保/でも、少し発想を変えてみると、観光振興の可能性を感じます。だって出張先では、それほど残業しませんよね。

-そうですね。

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大久保/出張先で夕方の6時頃に仕事が終われば、「せっかくだから、地元のおいしい料理でも食べたい」とか、近くに観光スポットがあれば、「ちょっと見に行ってみようか」という気がおこりませんか。

-たしかに。

大久保/それも観光です。兼観光という分類があり、その中に、仕事兼観光という考え方があります。

-はい。

大久保/さきほどの「工場夜景倶楽部」の夜景観光もふくめて、出張ビジネスマンを観光客に変えよう!というプロジェクトを、今年は学生と一緒に取り組んでいます。

-出張族を観光客に変えるという発想が新鮮です。


|出張ビジネスマンに意識しない観光を

大久保/出張ビジネスマンの多くは、自社の工場や取引先に仕事で来ているという意識はあっても、富士市に来ているという意識が希薄なのではないか、と思います。

-そう思います。

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大久保/しかしながら実際に宿泊状況を調べてみると、2泊、3泊と滞在している方や、何度も来ていらっしゃる方も多くいます。

-はい。

大久保/早めに仕事を終えて、「さて、どこで食事しようか」と思っても、良い情報がなければ、近くのコンビニでお弁当を買って、ホテルの部屋で食べ、そのまま寝てしまう。そんな出張ビジネスマンが多いとしたら、それは富士市にしてもビジネスマンにしても、とても残念ではないでしょうか。

-その通りですね。

大久保/ご存知かどうかわかりませんが、富士市にはおいしい焼き肉屋がたくさんあります。

-はい。

大久保/例えば、出張で宿泊するビジネスマンに地元で食事を楽しんでいただけるように、一人でも歓迎してくれる地元の焼き肉屋や居酒屋の数店と、市内のいくつかのホテルを巡回する送迎バスを走らせてみてはどうでしょうか。きっと、仕事の後の夕食が、ちょっと楽しみになるはずです。

-出張はしんどかったけど、あそこで食べた焼き肉はおいしかったな、という思い出も持ち帰ってもらえそうです。

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|ここにあるものの中に、人が動く施策を見つける。

大久保/それから、新幹線の新富士駅でお土産を買って帰る人も多いのですが、見ていると「うなぎパイ」を買って帰る人が多いのです(笑)。でも、やっぱり地元・富士のお土産を買ってほしいと思いませんか。

-はい。

大久保/巡回バスの中で、スマートフォンを使った夜景の撮り方をレクチャーして、移動途中に工場夜景を撮影してもらいます。その写真を職場やご家族に披露したら、そこから話題が広がる可能性もあります。奥さんやお子さんと一緒に「富士のお土産はおいしいね」なんて話題になれば、今度は「家族旅行で出かけてみよう」となるかもしれないですよね。

-観光というと、不特定多数の対象者を想定して、どうやって関心を持たせ、足を運んでもらおうか、と考えてしまいがちですが、その前に、いますでに来ている人を観光客に育てるほうが早いし、たしかに確実かもしれない。

大久保/ええ。

-それにビジネス客は、ここに工場や取引先がある間は、何度も来る確率が高い。リピーターになる可能性が十分にあります。おもしろい視点だと思います。

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大久保/もちろん、そんなに簡単に成功事例が作れるとは思っていません。現在、学生と一緒になって出張ビジネスマンのデータ集めをしながらプランを考えているところです。

-楽しみですね。

大久保/いまここに存在しているものの中にも、見方を変えたり、ターゲットを変えたりすることで、本当に人が動く施策を見つけられると思います。

-富士市を例にとってのお話でしたが、沼津や三島、御殿場など、地域ごとに眠っている資源がありそうです。


|新しい楽しみ方の提案を増やす

-最後に、これから取り組むべき課題は何でしょうか?

大久保/繰り返しになりますが、できることから行動に移すこと。いまここにあるものを、工夫したり、つなげたり…新しい楽しみ方の提案を増やすことです。そうすれば、静岡県側にもたくさんの観光客が来てくれるでしょう。何もしないままでは、誰も来ません。

-はい。

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大久保/もうひとつ、外国人観光客の場合、相手の国を理解するのも大切ですが、その国に合わせすぎる対応はあまり効果的ではないともお伝えしておきたいです。

-どういうことですか?

大久保/例えば、韓国からの観光客が多いから、日本旅館だけど漬け物はキムチに変えよう、などの対応ですね。観光客はそれを求めて日本に来ているわけではありません。ヨーロッパのホテルで、朝食にお茶漬けがでてきたら興ざめしませんか。

-たしかに。

大久保/日本らしさをもう一度見直して、それを磨いていくことが重要です。それこそが、おもてなしであり、それは迎え入れる側のポリシーで決定すべきです。

-はい。

大久保/それから、旅館には関心があるけど、泊まり方がわからない、という外国人も多くいます。その結果欧米系の観光客を受け入れている一部の旅館に、宿泊が集中するという現状があります。

-ホームページを英語や中国語、韓国語に翻訳している宿泊施設は増えていますが、見てほしい人に届いているかどうかはわかりません。これからは、海外に向けての情報発信の仕方が重要になりますね。

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大久保/そのためには、誰を呼びたいのかを明確にしなければいけません。最近では、日本を体験したいけど、旅館は敷居が高いし、価格も高いと思っている、若いバックパッカー向けのゲストハウスが人気になっています。富士宮市にも1軒オープンしました。

-へえ。

大久保/日本に来る外国人は、何にお金をかけるか、上手にメリハリをつけていますから、特徴をはっきりと発信することが大切です。

-施設などのハード面以上に、観光客にどう楽しんでいただくか、好きになって帰ってもらえるか、というソフトの面が大事になってきますね。

2020年には現在の2倍の外国人観光客が日本を訪れる計画です。外国人観光客には、静岡県のことはもちろん、日本のファンになって帰ってほしいと思います。
今日は、ありがとうございました。


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◆常葉大学 経営学部教授・大久保あかねさんへのインタビュー/完


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Posted by eしずおかコラム at 2014年07月24日12:00 | 31.大久保あかねさん
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