33.映画『子宮に沈める』主演/伊澤恵美子氏(2)

2014年10月16日12:00
今月の物語の主人公は・・・
映画『子宮に沈める』主演・伊澤恵美子(いざわえみこ)さん

33.映画『子宮に沈める』主演/伊澤恵美子氏(2)

 静岡出身。小学生の時の舞台出演をきっかけに女優を志す。大学進学とともに上京、活動の場を映像作品へと移す。近年は立教大学等で講師アシスタントを務める。2015年には日本とタイの国際共同製作『アリエル王子の監視人』主演が決定している。

伊澤恵美子公式サイト「EmikoIzawa Official Site」
映画『子宮に沈める』公式サイト
・上映情報
 静岡シネ・ギャラリー http://www.cine-gallery.jp
 2014年10月18日(土)~24日(金)

※聞き手は、(株)しずおかオンライン代表/海野尚史さんです。
※この記事は、全2回のインタビューのうちの2回目です。
≫伊澤さんのプロフィールと1回目のインタビューはこちら


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|実際には見ることのできないものを見せる

-物語のほとんどは、マンションの一室が舞台。外部からは見えない世界のできごとです。育児放棄された子どもたちが、どのように飢えていくのか。母親も世間も知らなかった光景を、映画の力で再現していますね。

伊澤/この事件について世間が知っているのは、映画以降のことだけなんです。そこで何が起きていたかは、誰も知らないし、誰も見ていない。実際には見ることのできないものを見られるようにする力が映画にはありますし、それこそが映画の役割だと思います。

33.映画『子宮に沈める』主演/伊澤恵美子氏(2)


伊澤/この映画はハッピーな話ではありませんが、いつでも見られる話を作品として見せても意味がない、とわたし自身は考えています。その点でも『子宮に沈める』はチャレンジングな作品ですし、それだけにお客さまにリアリティをもって見ていただけるように取り組んだつもりです。


|「わたしもお母さんになれるかな」と考えが変わりました。

33.映画『子宮に沈める』主演/伊澤恵美子氏(2)


-育児雑誌などに紹介されている母親は、どの人もオシャレで、幸せいっぱいというイメージですね。「良き母」というイメージに囚われ、それが重圧になって、弱音も吐けない。主人公の由希子もそんな一人だったように思います。

伊澤/はい。

33.映画『子宮に沈める』主演/伊澤恵美子氏(2)


-由希子という母親を演じる前と後で、伊澤さんご自身の中の「母親像」に変化はありましたか?

伊澤/はい。世の中には今でも、「20代で結婚して出産することが正解…」みたいな雰囲気がありますよね。わたし自身も親から「結婚しなさい、子どもを産みなさい、もうじき30歳よ」と言われました(笑)。今思えば、わたし自身がプレッシャーに囚われていたんだと気づきました。

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伊澤/これまでわたしは、子どもは欲しくないと思っていたんです。理由は、わたしは完璧なお母さんになれないと思っていたから。キャラ弁やロールキャベツを作ったり、ママ友とつきあったり、子どものために早起きしたり…。

33.映画『子宮に沈める』主演/伊澤恵美子氏(2)


伊澤/でも育児について調べ、たくさんのお母さんたちのお話を直接聞く中で、いろいろな子育てがあることを知りました。育児が本当に大変で、「疲れたときは、一日育児放棄しちゃうんです」とか「ごはんはピザの出前ですませちゃう」と申し訳なさそうに話してくれるお母さんもいました。

そのようなことはネットには書けないし、雑誌にも取り上げられませんが。それでも子どもは育っていくし、子どもたちはお母さんが大好きなんですよね。

33.映画『子宮に沈める』主演/伊澤恵美子氏(2)


伊澤/完璧な母親像に囚われることなく、肩の力を抜いてまわりに頼りながら子育てしていいんだと気づいてから、「わたしもお母さんになれるかな」と考えが変わりました。


|映画を見て、育児を理解するきっかけにしてほしい

-この映画をどのような人に見てほしいですか。そして、映画を通じて期待することはありますか。

伊澤/はじめは、お母さんたちに見てほしいと思っていました。ちょっとつらすぎるかもしれませんが。

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伊澤/しかし、独身の方やお父さんたちにも「お母さんはこうして、追いつめられてしまうこともあるんだ」という状況を見てもらいたい。そして、育児という環境の外側にいる人たちがこの映画を見て、育児に追われるお母さんを理解するきっかけにしてくれたら。

-外部からの理解と助けで、状況が変わることがきっとあると。

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伊澤/映画の中で、由希子がわかりやすくSOSを出していたようには思えないし、同じように自分ひとりで頑張ってしまうお母さんほどまわりに言い出せず、事態が深刻になるにつれ、ますます助けを求められなくなってしまうのではないでしょうか。

-そうですね。

伊澤/さらにこのような事件は、実は大都市や小さな町よりも、静岡市のような中規模都市に多いということも聞きました。いろいろな生き方が許容される大都市や、いまでも大家族や共同体が残っている小さな町に比べて、中規模都市は孤立化が進みやすいのかもしれません。

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伊澤/静岡のみなさんにもこの映画を見ていただき、育児を頑張っているお母さんたちに、「大丈夫かな」とすこしでも意識を向けてもらえればうれしいです。


|映画を通じて、新しい女性像を描いていきたい

-最後に、これからどんな役者を目指しているかを聞かせてください。

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伊澤/『子宮に沈める』では、自分を見つめ直す作業が多かったんです。母親役とか、ネグレクトとか、これまで自分からは遠いものと思っていた役に客観的に向き合うことができました。そのことが、逆に自分自身が既成のイメージに囚われていたと自覚するきっかけともなりました。また、女性差別をしていたのは自分自身ではないか、という気づきにもつながって…。わたしにとって、これは大きな発見でした。

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伊澤/今回の役が、女性の生き方について深く考える機会になり、これからどんな役も新鮮な考え方で演じられる気がしています。これからは映画を通じて、新しい女性像を描いていけたらいいなと思います。

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-2015年には、日本・タイ国際共同製作映画『アリエル王子の監視人』も公開ですね。これからの活躍を楽しみにしています。今日はありがとうございました。

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◆映画『子宮に沈める』主演・伊澤恵美子さんへのインタビュー/完


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Posted by eしずおかコラム at 2014年10月16日12:00 | 33.伊澤恵美子さん
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