35.オルタナティブスペース・スノドカフェ代表/柚木康裕氏(4)

2015年01月30日12:00
今月の物語の主人公は・・・
オルタナティブスペース・スノドカフェ代表
 柚木康裕
(ゆのきやすひろ)さん


35.オルタナティブスペース・スノドカフェ代表/柚木康裕氏(4)

 1965年、静岡市清水区生まれ。リサイクルブティック・スノードール、オルタナティブスペース・スノドカフェ経営。現在も会社経営とともに様々な人が出会う「場」作りを通して、地域から発信するアートの支援活動を行っている。
リサイクルブティック・スノードール
洋服をめぐる物語。by スノードール


※聞き手は、(株)しずおかオンライン代表/海野尚史さんです。
※この記事は、全4回のインタビューのうちの4回目です。
≫柚木さんのプロフィールと1回目のインタビューはこちら
≫インタビュー2回目はこちら
≫インタビュー3回目はこちら


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|2015年はある方向を示せるような一年にしたい

-ブティックの経営者でありながら、カフェを始めたり、地域のアートイベントではコーディネーターをしたり、芸術批評雑誌を発行したり、静岡大学アートマネジメント講座の講師であったり。ぼくに映る柚木さんは、経営者というよりも活動している人、にみえます。その背景に何があるのかとても気になります。

柚木/これまでは「来るもの拒まず」で、声をかけていただいたものをなんでもやってきた、というのがホンネです。2015年はぼく自身がそれを整理し、ある方向を示せるような一年にしたいと思っています。

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-核になるものを一つ挙げるとすれば?

柚木/アート・マネジメントでしょうか。

-そのために、“オルタナティブ・スペース”という場を運営している。

柚木/そうですね。

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|今持っているリソースで出来ることがあるはず

-静岡で芸術を語る時に、地域というフレームにどうしても縛られてしまうと思うのですが、柚木さんの中で、芸術と地域はどのようにつながっているのですか。

柚木/ぼくが芸術に興味を持った時に、静岡のアートの世界にはアーティストしかいなかったんです。でも、そんな業界ってないですよね。

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柚木/サッカーという業界を例にとれば、プレイヤーである選手がいて、チームには監督やコーチ、マネージャーがいて、スタジアムを管理する人がいる。スタジアムには観客が集まって、ユニフォームにはスポンサーがついている。それら全体で業界が成立している。

-はい。

柚木/プレイヤーであるアーティストしかいなかったら、業界は成立しません。それでは産業としての広がりは生まれないし、もったいないですよね。それに、アーティスト自身もいろいろな人に作品を見てもらい、評価されることで成長したいと望んでいるはずです。

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-『DARA DA MONDE』(ダラダモンデ)を通じて、それまで点と点だったアーティスト同士がつながって線になり、ギャラリーや美術館を巻き込みながら、さらに地元の大学でアートマネジメントを教えることで面として広がっていく。静岡のアートの世界が業界として成立しつつありますね。

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柚木/瀬戸内国際芸術祭には、100万人を超える人が来場します。信じられないことですが、ぼくもわざわざ出かけていくひとり。芸術には、それだけ人を動かす力があるんです。静岡における芸術の可能性、公共性を考えるとき、新しい何かをゼロから作るのは現実的ではありませんが、今すでに静岡が持っているリソースに着目することで、まだまだできることがあるはずです。

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-ぼくもそう思います。


|パフォーミング・アーツというつながり

柚木/この視点で見回すと、身近に可能性を感じるものが三つあります。ひとつは、1992年から続き、今では4日間で150万人ほどを動員する「大道芸ワールドカップin静岡」。もうひとつは、初代芸術総監督の鈴木忠さんから引き継いだ宮城聡さんの開放路線が、着実に実を結びはじめているSPAC静岡県舞台芸術センター。ぼく自身は、2013年のゴールデンウィーク期間中に開催された「ふじのくに⇄せかい演劇祭」がひとつの成功モデルではないかと思っています。

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柚木/そして最後が、いま静岡市民の中で盛り上がりつつあるコミュニティダンスやコンテンポラリーダンスです。

-はい。

柚木/春の「ふじのくに⇄せかい演劇祭」と秋の「大道芸ワールドカップin静岡」、そして市民ダンスはすべてパフォーミング・アーツという文脈でつながっています。これらをひとつの芸術表現としてアピールすることは、静岡県にしかできないことだと思います。

-「大道芸ワールドカップin静岡」も「SPAC静岡県舞台芸術センター」も、静岡になくてはならない歴史を作ってきていますし、市民の間で始まったダンスはしっかり定着しつつあります。前者はすでに確かなファンがいて観客動員力もあり、ダンスはボトムアップで草の根的に広がっている。それらがひとつの文脈で再定義されたら、今後ますます大きくひろがる可能性が期待できますね。

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柚木/はい。それにパフォーミング・アーツは総合芸術なので、舞台や衣装デザイン、音楽など、すべての芸術表現を一体としてアピールできるという点も大きいです。視覚芸術のアーティストも、AOIなどが育成している音楽家も参加できます。身体性が希薄になっている時代だからこそ、演劇表現はこれからとても重要になっていくはずです。ワークショップという方法で、一般の人が参加し体験できることも、パフォーミングアーツのいいところです。

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柚木/2020年には世界最大の身体の祭典が開催されます。もちろんオリンピックが最終地点でないにしろ、そのターニングポイントに向けて地方からも自分たちのリソースを上手に使い発信していくべきだと思います。そして、その時に公共の組織や施設だけでなく、ぼくたちオルタナティブな活動も重要になってくると認識しています。

-県外からのお客さまも大歓迎ですが、まずは地元のみなさんに観にきてもらいたいですね。2020年に静岡のパフォーミングアーツ・イベントがどのような姿に発展できているか、とてもわくわくしてきました。今日はありがとうございました。

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◆オルタナティブスペース・スノドカフェ代表・柚木康裕さんへのインタビュー/完


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Posted by eしずおかコラム at 2015年01月30日12:00 | 35.柚木康裕さん
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