38.しろくまジャム/武馬千恵氏(2)

2016年01月21日12:00
今月の物語の主人公は・・・
「しろくまジャム」・武馬千恵(たけま ちえ)さん

38.しろくまジャム/武馬千恵氏(2)

 【プロフィール】
 1980年、愛知県名古屋市生まれ。エコールキュリネール国立辻フランス料理専門カレッジ卒業後、フランス料理専門店に勤務。その後、青年海外協力隊に参加し、カリブ海 セントビンセント及びグレナディーン諸島で村落開発普及員として活動。2010年に帰国後、JICA静岡県デスク 静岡県国際協力推進員として勤務。2014年から、手づくりジャムの販売開始。2015年6月、葵区鷹匠一丁目に「しろくまジャム」オープン。

「しろくまジャム」公式ホームページ
「しろくまジャム」facebook


※聞き手は、(株)しずおかオンライン代表/海野尚史さんです。
※この記事は、全3回のインタビューのうちの2回目です。
≫インタビュー1回目はこちら
≫インタビュー3回目はこちら


・・・・・・・・・・・・・・・

|研修に行った限界集落の農家の方との出会い

-中山間地にかかわるようになったきっかけは?

武馬/わたしは青年海外協力隊として、カリブ海にあるセントビンセントとグレナディーン諸島という国に行きました。派遣される前、村落開発について学ぶ群馬県甘楽町での農村研修に参加しました。名古屋市出身で都会育ちだったわたしは、その群馬県の研修で、生まれてはじめて限界集落を訪問しました。このときにたくさんの農家の方から、日本の農業の実態、限界集落での暮らしや課題についてお話を伺い “将来は中山間地の役に立つ仕事がしたい” という気持ちが漠然と芽生えました。

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-農家の方から直接話を聞いたことがきっかけになったんですね。それで静岡へは?

武馬/青年海外協力隊から帰ってきて、さてこれからどうしようかと思っていたときに、たまたま、協力隊を派遣しているJICAの窓口である、JICA国際協力推進員の募集が静岡であったんです。こちらも地域を盛り上げる仕事でしたので、それもいいかなと思って静岡にきました。

-静岡との出会いも偶然だった?

武馬/そうですね。静岡県は中山間地が多くて、休日には仕事も絡めて出かけられるのもよかったです。海外の課題が地域の課題につながっていることに気づくこともできて…。JICAのお仕事は3年契約なのですが、静岡で活動をしているうちに、契約が終わったらそのまま静岡で仕事をしたいな、と考えるようになっていました。


|山と町の橋渡しになろう、と。

-農家や中山間地の方が困っていることは?

武馬/丹精こめて作った農作物が適正価格で販売できなかったり、直販しようにも販路の開拓が難しかったり。将来のことでは、後継者不足が大きな問題です。人口が減れば学校がなくなって、ますます子どもが減るという悪循環になってしまいます。

-どこも共通の悩みですね。特効薬はないですから、地道に取り組むしかない。

武馬/そうです。それに「中山間地の課題は!」なんて語っても、逆に敬遠されてしまいますから。良い面に着目して、おしつけにならないように魅力を発信して、さりげなく興味をもっていただければと心がけています。まずは、実際に現地に出かけるきっかけづくりが第一歩だと思っています。

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-で、何をやろうと?

武馬/最初は総務省が支援する「地域おこし協力隊」を考えました。それで、いろいろな方に話を聞いてみると、中山間地の振興のためにがんばっている人はたくさんいることがわかりました。一方で、その人たちの共通の課題として「広報がうまくできない」「関係者にしか情報が届かない」という悩みを多く聞きました。

-中山間地の情報が市民に届いていない。

武馬/そうです。

-町に暮らす人、無関心な人にこそ、地域の中山間地の実情を伝えて、関心をもってもらいたいわけですよね。

武馬/はい。でも、私も前職のJICAでの仕事の経験から、イベントのチラシを多くの人に広く配布することの難しさを感じていました。だったら、自分が街中にお店を開いて、中山間地の情報発信をしながら、町に暮らす人との橋渡しをしてみようと思ったのです。

-なるほど。

武馬/地元の食材や中山間地の情報発信の手段に手づくりジャムを選んだのは、青年海外協力隊として暮らしたセントビンセント島のホストファミリーが、ジャムづくりがとても上手だったから。スーパーに卸していたくらいに!

-そうですか。

武馬/そこでジャムづくりを手伝ったことがヒントになりました。ジャムづくりが楽しかったというだけでなく、開けるときのあのワクワク感。それに、おいしいジャムがあれば朝が楽しくなるでしょ?「ジャムっていいな」と思ったんです。

-販売面では?

武馬/商品としては、保存できて冷蔵の必要がありませんし、県外にもジャムと一緒に静岡の中山間地のストーリーを届けることができます。それらもジャムを選んだ理由です。

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|「静岡でならやっていける」という確かな気持ち

-オープンしてからの半年を振り返ってみて、手応えは感じていますか。

武馬/はい。たくさんのお客さまに来ていただいて感謝しています。自分の力ではなく、仕入れ先の県内の農家さんに恵まれ、お店を応援してくれるたくさんの人に支えられて、なんとかやってきました。おかげさまで、1年目2年目でやろうとしていたことを少し前倒しできています。生産者の方を呼んでお店でイベントを開いたり、1月にはジャムを売りに東京のイベントに出かける予定もあったり。

-お客さまの反応は?

武馬/お客さまとお話しして感じるのは“みんな静岡が好き”ということです。「しろくまジャム」の仕入れ先のキウイ農園さんや、配布しているチラシや冊子で紹介されている中山間地のイベントにでかけるお客さまも増えています。

-順調な要因は?

武馬/協力してくれる人に恵まれているからだと思います。静岡の特徴じゃないですか?がんばっていると応援してくれる人がたくさんいるんです。イベントの運営やチラシの配布を手伝ってくれたり、農家さんや関係者を紹介してくれたり…。周りの人たちのサポートがあるから「静岡でならやっていける」という気持ちがすごくあります。

-それは心強いですね。

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|かわいいカフェの本当の目的は

-夜はお店を貸切りにしているとか。

武馬/週に1~2回ですが総額1万5000円以上で貸切にしています。先日は、グリーンドリンクス静岡さんがご利用くださり、16人×2回のイベントを開催しました。いずれも満員でした。

-大盛況ですね。

武馬/グリーンドリンクスさんは、目指している方向がわたしたちと同じだと思っているんです。なので、とてもいい空間が生まれました。イベントをやるうえで、気をつけなくてはいけないのは、関心のある人だけが集まる内輪の会にならないようにすること。本当に届けなくてはいけない”無関心層の方”に届かなくなってしまいますから。だから、お店も「静岡のアンテナショップ!」と大々的には詠わないように意識しています。

-ふつうの方には、敷居が高くなってしまう。

武馬/そうです。「しろくまジャム」は、あくまでかわいらしいお店として運営していくことで、いろいろな人に入って来てもらいたいのです。特別に関心を持っていない人がお店でイベントのチラシを見て、参加してみようとなって、関心層の方にももちろん参加していただいて。ふたつの扉を開けておくことで、テーマがしっかりと感じられるお店に育てていきたいんです。

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Posted by eしずおかコラム at 2016年01月21日12:00 | 38.武馬千恵さん
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