43.インターセクション/金澤実幸氏(2)
2017年08月04日12:00
今月の物語の主人公は・・・
インターセクション・金澤実幸(かなざわ みゆき)さん
1967年清水市(現・静岡市清水区)生まれ。磐田市在住。高校卒業後上京、落語ファンとなる。東京と静岡で電機メーカー・広告代理店・新聞社などに事務職として勤務後、2006年鈴木拓利と『静岡落語往来』を創刊、インターセクションを立ち上げる。2015年に誌名を『東海落語往来』に変更、静岡・愛知を中心にした落語会情報を紙媒体とwebで発信中。
◆東海落語往来 HP
※聞き手は、(株)しずおかオンライン代表/海野尚史です。
※この記事は、全4回のインタビューのうちの2回目です。
≫第1回 ファンと運営者と落語家さんの三者を結ぶ情報誌
≫第3回 自分が一番知りたかった地元の落語会情報
≫第4回 落語会の記録を後世に
・・・・・・・・・・・・・・・
|第2回 語りだけで感情をつかみ心を動かす落語の力
- 海野
- 東京や大阪には寄席がありますが、静岡県にはありませんね。
- 金澤
- はい。
- 海野
- 静岡県内で落語を見ようとすると、落語会に行く、ということになると思いますが、県内ではどの程度開催されているんですか?
- 金澤
- そうですね…、(『東海落語往来』のスケジュールページで確認しながら)平均すれば毎月15~20回ほどだと思います。
- 海野
- そんなにたくさん開催されているんですか! 知りませんでした。どんな場所でやっているんですか?
- 金澤
- 飲食店やホールが多いです。
- 海野
- 私たちが気づかないだけで、すぐ近所でもやっているのかもしれませんね。一方で、落語会は初心者にはちょっと敷居が高い印象があって、やることは知っていても気軽に足を運べない、という人もいそうです。
- 金澤
- そうかもしれませんね。でも、そんな落語初心者でも、情報誌で紹介されている落語会は「初心者でも行っていいんだ」と思ってくれるようです。
- 海野
- たしかにそうですね。ところで、『東海落語往来』の読者はどんな人ですか?
- 金澤
- 基本は落語ファンです。もちろん年配の方が多いですが、30代から40代の読者も増えています。
- 海野
- メディアではイケメンな落語家が人気のようですし、『赤めだか』がドラマ化されたり、映画「の・ようなもの のようなもの」が上映されたり…。金澤さんも最近の落語人気の実感はありますか?
- 金澤
- あります。きっかけはさまざまだと思いますが、若いファンは増えています。『東海落語往来』の読者の中にも、自分の贔屓(ひいき)にしている落語家さんのスケジュールをチェックして、あちこちの落語会に出かけている方がいます。
- 海野
- 贔屓の落語家さんができると、高座以外の楽しみもありそうですね。
- 金澤
- そうですね。贔屓の若手落語家さんを応援しながら、前座、二つ目、真打へと成長していく過程を一緒に共有する楽しみがあります。さらに、勉強会を開いてあげたり、真打ちに昇進したらお花を出したり、パーティーに出席したりすることも楽しいです。
- 海野
- 金澤さんご自身が落語を好きになったきっかけは?
- 金澤
- 最初の出会いは小学生の時。学校の図書館で落語の本を見つけたことがきっかけでした。4年生の時には、当時静岡市にあった児童会館というホールで一席やったこともあります。
- 海野
- 4年生で初高座ですか。すごいですね。その時はどんな演目を?
- 金澤
- 「平林(ひらばやし)」だったと思います。着物は持っていなかったので、洋服で演じました。その時に賞をもらって、とてもうれしかったことを覚えています。
- 海野
- すてきな思い出ですね。
- 金澤
- 次の出会いは、大学進学で東京に出てからになります。もともとは、歌舞伎と宝塚が好きだったんですが、なかなかチケットを買えなくて。それから、小劇場にも足を運んでみたんですが、こちらはちょっと違う気がして…。それで落語会に行くようになりました。
- 海野
- その頃の落語界はどんな状況でしたか?
- 金澤
- 80年代後半から90年代にかけて、落語界には元気のいい若手が登場し始めました。春風亭昇太さんや立川談春さん、志らくさんなどが二つ目のころです。若手に勢いがあっておもしろかったです。その頃、落語にハマってしまいました。
- 海野
- 今の落語会を代表する師匠たちが、経験を重ねて成長していく過程をずっと見てきたわけですね。そんな金澤さんにとっての落語の魅力とは?
- 金澤
- 実際には一対多数なんですが、高座を見ていると一対一のように向かい合えることでしょうか。あと、語りだけで聞き手の感情をつかみとって動かしてくれるところです。
- 海野
- お好きな演目は?
- 金澤
- 「紺屋高尾(こうやたかお)」です。花魁に恋した男の片思いのパワーのすごさと、その思いに応えた花魁の優しさ。実際にはありえない物語と思うと、そのロマンスが魅力的に思えます。
- 海野
- すてきな恋のお話しですね。
- 金澤
- もう一つは、「青菜(あおな)」という夏の噺です。お屋敷の外での仕事で火照った体、口に含んだ氷の冷たさ、その一方でそれを真似ようとした職人夫婦の家での押入れの蒸し暑さ、とんちんかんなやりとりなど…。夏の風情の中、お屋敷のご主人とがさつな職人夫婦の対比がとても楽しいです。
Posted by eしずおかコラム at
2017年08月04日12:00
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43.金澤実幸さん