44.ガイアフロー静岡蒸溜所/中村大航氏(2)

2017年09月26日12:00
今月の物語の主人公は・・・
ガイアフローディスティリング株式会社代表取締役・中村大航(なかむら たいこう)さん

44.ガイアフロー静岡蒸溜所/中村大航氏(2)
 1969年、静岡市清水区生まれ。2000年、34歳で、祖父の代から続く家業の精密部品製造会社の代表に就任。11年間経営に携わった後、2012年1月、再生可能エネルギー事業での起業を計画してガイアフロー株式会社設立。同年6月、スコッチの産地として知られるスコットランド・アイラ島の蒸溜所巡りの旅をきっかけに、ウイスキーを自らの手でつくることを決意。帰国後、ガイアフロー株式会社の事業目的をウイスキー事業を核に再構成。2014年ガイアフローディスティリング株式会社を設立、2016年、ウイスキー製造免許を取得し、オクシズ玉川地区(静岡市葵区)に、ウイスキー工場「ガイアフロー静岡蒸溜所」を完成させる。2016年、静岡蒸溜所で製造するウイスキーを樽ごと販売する「静岡プライベートカスク2017」は、販売1日で完売。全国のウイスキーファンから注目を集めているほか、観光や地域振興の面からも大きな期待を寄せられている。

ガイアフロー株式会社 HP
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※聞き手は、(株)しずおかオンライン代表/海野尚史です。
※この記事は、全4回のインタビューのうちの2回目です。
≫第1回 全国の候補地から選んだ安倍奥・玉川
≫第3回 価格競争からオンリーワンの世界へ
≫第4回 全国からオクシズへ


・・・・・・・・・・・・・・・

|第2回 静岡で世界に認められるウイスキーを
海野
ご実家の家業は、精密部品の製造会社でしたね。そちらでは、何年間、社長を務めていたのですか?

中村
34歳で就任して、11年間勤めました。

海野
社長業をこなしながら新規事業を模索していたのですか。

中村
そうです。中小企業において永続的な事業はどのようにして可能になるのか、をよく考えていました。

海野
経営者として大切な仕事ですね。

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工場の体験ツアー・コースに沿って案内してくれる中村大航社長

中村
『日本でいちばん大切にしたい会社』(あさ出版)で知られる法政大学・坂本光司研究室のフィールドワークにも参加しました。その時に、日本のさまざまな中小企業を訪問する機会があって。強い中小企業の共通点を調査研究して、わかったことがいくつかあったんです。

海野
強い中小企業の共通項とは?

中村
ひとつは、多くの消費者、お客さまを持っていること。ふたつ目は、商圏が広いこと。そして、3つ目は、自社で販売まで行っていること。さらに、その企業なりの独自性やこだわりが加わることで、業界内で独自のポジションを獲得している会社が強いんです。

海野
なるほど。

中村
ビジネスの作り方として、大事なポイントはわかりました。でも、問題は、そこに何を当てはめていくのか。どんな商材を扱うのか、ということなんですね。

海野
そうですね。

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スコットランドにオーダーした新品のポットスチル(蒸溜釜)

中村
最初は、本業の工業製品の精密部品の分野でそのような商材がないか、と探してみました。でも、なかなか見つからない。新規事業を始めることだけは決めていたんですが、何をやるかが、なかなか決まりませんでした。

海野
そこからどんなきっかけで、ウイスキー事業への参入を決めたのですか。

中村
もともとお酒は好きで、ウイスキーは学生の頃から飲み親しんでいました。でも、きっかけとなったのは、2012年6月のスコットランド・アイラ島の訪問です。この時に現地の蒸溜所を見学して、ウイスキー事業にビジネスとしての可能性を感じました。

海野
新規事業で悩んでいた時期ですか。

中村
そうですね。何をやればいいのか思い悩んでいた時期に、たまたまパリに行く機会があり、せっかくだからと、憧れだったスコットランドに出かけたんです。スコットランドではアイラ島とジュラ島にある9ヶ所の蒸溜所を、4日間かけて回りました。

海野
9か所!どうでしたか。

中村
ボウモアやアードベッグ、ラフロイグなど、100年以上の歴史のある蒸溜所を見学して、最後に訪ねたのがアイラ島で最も新しいキルホーマン蒸溜所。ここは、2005年設立の、ベンチャーのウイスキー蒸溜所です。でも、すでに日本にも多くのファンを持つほど人気があるんです。

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海野
設立数年で高い評価のウイスキーを作っているんですね。

中村
そうです。蒸溜所としては“小さい”と聞いていましたが、見学するまでは、きっと先端技術を駆使した近代的な蒸溜所なんじゃないか、と想像していたんです。

海野
コンピューターやITを駆使した蒸溜所だろうと。

中村
ところが現地に行ってみると、ほんとうに小規模のファーム・ディスティラリーでした。牧場小屋を改装した建物を蒸溜所として再利用していて、その中に、小さな貯蔵庫がひとつ。少人数で、ハンドメイドで造っている、ほんとうにローテクの醸溜所でした。

海野
そうですか。

中村
そんなキルホーマン蒸溜所を見学ながら、気づいたんです。静岡の小さな酒蔵レベルの規模でも、世界で認められるウイスキーを作ることができるんじゃないかと。この体験は、とても大きな驚きでした。

海野
はい。

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中村
あらためて考えてみると、お酒はコピーできない商品なんですね。土地の自然環境や古くからの歴史・文化も含めて、お酒の魅力を作っている。そういうものにこそ、ブランドとして確固としたものを作れる可能性があると思うんです。

海野
オンリーワンの商品を育てられると。

中村
しかも、新規でウイスキー製造に参入しようとする人は少ないだろうと。

海野
小資本でウイスキー製造ができるとは、なかなか想像できないでしょうね。

中村
だからこそ、ウイスキーは自分が挑戦する価値があると思えたんです。キルホーマン蒸溜所で見学しながら、その場で、どうやったら自分が蒸溜所を立ち上げることができるか、を頭の中で考え始めていました。その時点で、ウイスキー製造を新たな事業にしていこうと決断していました。

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光が入る明るい貯蔵庫にアメリカ製のバーボン樽が並ぶ。温度変化が大きいことで熟成が早くなる

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Posted by eしずおかコラム at 2017年09月26日12:00 | 44.中村大航さん
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