45.公益財団法人 するが企画観光局/片桐優氏(1)

2017年11月27日12:00
今月の物語の主人公は・・・
公益財団法人 するが企画観光局 CMO(チーフ・マーケティング・オフィサ-) 企画開発部長、地域連携戦略室長・片桐優(かたぎり ゆう)さん

45.公益財団法人 するが企画観光局/片桐優氏(1)
 京都大学大学院卒業後、マーケティングリサーチ業界国内最大手である株式会社インテージに入社。主に消費財メーカーの商品開発、マーケティング戦略立案プロジェクトに従事。新規サービス・事業の立ち上げや部長職を経て、平成26年、日本最大の料理レシピサイトを運営する、株式会社クックパッドに入社。クックパッドではトレンド調査室の責任者を経て、平成27年1月、広告事業のマネジメントを担当する広告事業部長職に着任。平成29年4月から現職に就任。

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※聞き手は、(株)しずおかオンライン代表/海野尚史です。
※この記事は、全7回のインタビューのうちの1回目です。
≫第2回 「どうすれば露出につながるか」を、最初から設計して組み立てる
≫第3回 人は「場所」と「できること」をセットで記憶する
≫第4回 首都圏の教育意識の高い30~40歳代の高所得世帯に向けて
≫第5回 お茶にまつわる体験の提供で高付加価値商品を開発
≫第6回 ソフト開発と人材育成がポイント
≫第7回 ヒト・モノ・カネのすべてにおいて投資意識を変える

・・・・・・・・・・・・・・・
 国をあげて観光立国実現に向けて邁進する中、2017年10月1日に、静岡観光コンベンション協会から名称変更した「するが企画観光局」。同組織は、DMO(観光地経営組織)として、静岡県中部(静岡、島田、焼津、藤枝、牧之原、吉田、川根本町の5市2町)の観光振興や街づくり推進を目的に、観光誘客に向けたマーケティングや戦略立案など、重要な役割を担っていきます。今回は、「するが企画観光局」の企画開発部長に就任した片桐優氏に、静岡県中部地域の観光の可能性についてお話をお聞きしました。

* * * * * *

|第1回 静岡県中部地区の認知度の低さが浮き彫りに

海野
今日は、今年8月に実施した全国5千人のアンケート調査(インターネット調査、有効回答数5360人、47都道府県、20~60代、男女)でわかったこと、また調査結果を受けて、静岡県中部地区の観光振興に向けてどんな取り組みを考えているのか、お話をお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。

片桐
よろしくお願いします。

海野
10月5日に開催された観光戦略会議「デスティネーション・ブランド・カンファレンス」の報告では、静岡県中部地区は、国内の主要旅行先としてほとんど認知されていないという報告が印象に残りました。

片桐
そうですね。「自分が行ってみたい旅行先」という質問で、行ってみたい国内の観光地を思いつくまま記入回答してもらったところ、5,360人の方から11,896票の回答を得ました。1位は「北海道」の15.6%、そして「沖縄」13.1%、「京都」5.2%の順。1万数千のうち、静岡県中部地区に含まれる観光地名は6個でした。「純粋想起シェア」は、約0.05%になります。

海野
そうでしたか。

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片桐
「”静岡県中部”といわれて連想される旅行先名を書いてください」という質問では、地区外にある「富士山」との回答が17%で最も多く、「なし」が14%で2番目。そして、「浜名湖」9%、「伊豆」7%、「熱海」5%、「浜松」4%などの地区外の観光地をあげる「誤認」が計56%。これは、静岡県内の回答者も含めての数字です。県中部地区では、「三保松原」が4%、「お茶・茶畑」、「焼津」、「日本平」は各2%でした。

海野
静岡県中部のことは、ほとんど認知されていない、ということですね。

片桐
はい。旅行先リストを渡して「この中から知っているものをチェックしてください」という、比較的難易度の低い質問に対しても30%程度しかありません。この程度の数字ですので、中部地区は観光目的地として、現状ではまったくポジションがないというところから考えていく必要があります。

海野
わたしも含めて、これまで地元の人は、自分が知っている、またはアピールしてきた観光地や施設は、地域外や県外の人も少しは知ってくれているはず、という勝手な思い込みがあったかもしれませんね。

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片桐
ええ。それは、私もすごく感じています。

海野
観光施策を考えるベースとなる認識のズレが、今回の調査によって客観的に可視化できました。それには、片桐さん自身が外部の目線を持っていることも役立ったのだと思います。ここからは、今回の調査結果をもとに、どのような観光施策に取り組んでいくのか考えていくことが重要になります。

片桐
そうです。そこで問題になるのが、旅行先の選定プロセスにおいて宿泊観光旅行者の96%が、「最初から頭の中にある候補地から決める」と回答していることです。

海野
それは?

片桐
どういうことかというと、「博多」を例に説明すると、博多に出かけた旅行者のうち、最初から「次は博多に行きたいな」と決めていた人が約50%。

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片桐
「博多にしようかな、金沢にしようかな」と複数の候補地をあげ、とくに調べることなく、なんとなく決めている人が約20%。「博多にしようかな、金沢にしようかな」と複数の候補地をあげて、そこから情報を集めて、その結果博多に決めている人が約19%。それから、候補地を決めずに「何かおいしいものを食べに行きたいな」とか「最近は、どんなところが話題なのかな」というような選び方で決めている人が1.9%。

海野
はい。

片桐
つまり、頭の中に静岡県中部地区の観光地が入っていなければ、そもそも選ばれないということなんです。

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海野
具体的な旅行の計画を立てる前に、頭の中にインプットされていることが重要なんですね。

片桐
そうです。頭の中に存在する旅行先などの情報で、宿泊観光旅行の96%が決められているのに、旅行者の頭の中に、静岡県中部地区はほとんど存在していません。ここが問題なんです。

海野
なるほど。

片桐
96%の中に、静岡県中部地区内の目的地がたくさん入っていれば、観光情報が集まっているメディアやプラットフォームに適切な情報を提供していけば、人を動かすことができるんです。でもこれまで、このことをわかっていませんでした。これは大きな課題です。

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Posted by eしずおかコラム at 2017年11月27日12:00 | 45.片桐優さん
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