46.シンフォニエッタ静岡 芸術監督・指揮者/中原朋哉氏(2)

2018年04月04日12:00
今月の物語の主人公は・・・
シンフォニエッタ静岡 芸術監督・指揮者・中原朋哉(なかはら ともや)さん

46.シンフォニエッタ静岡 芸術監督・指揮者/中原朋哉氏(2)
 1973年愛知県小牧市生まれ、焼津市育ち。作曲を長谷川勉、伊藤康英、後藤洋の各氏に学んだ後、フランス・ディジョン音楽院指揮科にてジャン=セバスチャン・ベロー氏に師事。1993年からはフランスおよび日本においてパスカル・ヴェロ氏のアシスタントを務める。1996年フランス国立リヨン管弦楽団定期演奏会、グルノーブル音楽祭に同管弦楽団史上最年少の指揮者として23歳でデビュー。フランス、オーストリア・ザルツブルクを拠点に活躍後、2005年、国内外のトップアーティストを中心に構成されるプロの室内オーケストラ「シンフォニエッタ 静岡」を創設。芸術監督・指揮者を務める。モーツァルトとフランスの近・現代作品の紹介に力をいれる。また、芸術分野に関する文化政策研究にも力を入れており、2018年3月に修士論文『日本のオーケストラに関する公的支援制度の研究 -ハイブリッド型支援制度の可能性-』で静岡文化芸術大学大学院文化政策研究科を首席で修了。2018年4月からは京都橘大学大学院文化政策学研究科博士後期課程において研究を継続している。日本公共政策学会、音楽芸術マネジメント学会会員。

一般社団法人シンフォニエッタ静岡


※聞き手は、(株)しずおかオンライン代表/海野尚史です。
※この記事は、全3回のインタビューのうちの2回目です。
≫第1回 歴史の中で埋れてしまった音楽を静岡県から発信
≫第3回 演奏会を通じて生活の中に豊かさを

・・・・・・・・・・・・・・・
|第2回 お客さまの音楽の世界を広げ、新たな魅力の気づきのきっかけに

海野
静岡を拠点に活動することでの苦労はありますか?

中原
静岡でオーケストラを運営することは、想像以上に難しいです。静岡市の人口なら、もっと音楽を聴きに来てくれる人がいると思っていたのですが、予想以上に少なかったですね。

海野
以前、静岡音楽館(AOI)学芸員の小林旬さんにお話(「インタビューノート 」)を伺いましたが、小林さんも「集客には苦労している」と言っていました。

中原
静岡の県民性かもしれませんが、飽きやすくて、根付かないですね。なかなかリピーターになるまでいかず、聞き手が育たないように思います。

海野
その状況に変化はありませんか?

中原
創立以来、12年間変わりませんね。いまだに、来客数がいちばん多かったのは、最初の演奏会ですから。

海野
そうでしたか。それでも、52回も定期演奏会を開催しているのはすごいことだと思います。

中原
もう、意地ですね(笑)。

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海野
最近は、クラシックファンの裾野を広げるための活動が増えています。

中原
「クラシック音楽を聴きにきてください」という広報活動は、十分に行われています。誰でも知っている名曲で構成された演奏会を開いたり、わかりやすいプログラムを頻繁に演奏したり。静岡交響楽団さんも、新静岡セノバ前や静岡駅北口駅前地下広場、清水駅前銀座みたいな、静岡市内の人の集まる場所に静響アンサンブルが出向いて演奏する「まちかどコンサート」の開催など、クラシック音楽の裾野を広げる活動をしてくれています。

海野
自分の知っている有名な曲を、プロの演奏で気軽に聴くことができる場は貴重ですね。無料というのもうれしい。

中原
「シンフォニエッタ静岡」では、0歳児をもつお母さんでも気がねなく音楽を楽しめる「0歳からのファミリーコンサート」や、学校での音楽鑑賞教室など、いろいろな活動を続けています。でも、広報活動に力を入れても、残念ながらクラシックファンの数が増えている実感はありません。

海野
そうですか。

中原
いまでもクラシック音楽を好きな人は、東京まで聴きに行ってしまいますしね。

海野
人口は減る一方で、音楽の種類はますます多様になっていますし、静岡は東京にも近いですし…。静岡で開催する演奏会に来るファンを増やすのは、簡単ではなさそうです。

46.シンフォニエッタ静岡 芸術監督・指揮者/中原朋哉氏(2)

中原
「誰もが知っている曲を演奏して欲しい」という依頼は、ぼくたちにもたくさん寄せられています。しかし、そのようなプログラムは、ほかのオーケストラが繰り返し演奏しているので、「シンフォニエッタ静岡」までが、同じことをやる必要はないと思っています。

海野
ええ。

中原
同じ曲の繰り返しだけではオーケストラに将来はないですし、ぼく自身が発信したいのも、そんなことではありません。

海野
といいますと…?

中原
「運命」や「新世界」「未完成」などはほかのオーケストラにおまかせして、ぼくらは、クラシックファンが次にステップアップするための、材料となるような楽曲をやることに、意義があると考えています。

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海野
それは?

中原
うちの役割は、クラシックファンの裾野を広げることよりも、コンサートで演奏される機会の少ないよい作品や、歴史の中で埋もれている作曲家の作品を取り上げ、東京でも、大阪でも聴けない、「シンフォニエッタ静岡」独自のプログラムを演奏することです。

海野
はい。

中原
それが、クラシックに興味を持った人を、次のステージに導くことになる、と考えています。

海野
お客さまが、音楽の世界を広げたり、新たな魅力を発見したりするきっかけになると?

中原
そうなりますね。お客さまは、元々クラシックを好きな人が多いのですが、ぼくたちの演奏が新たな興味を引くきっかけになってほしいです。また、初心者にとってはもっとクラッシックを好きになる、ステップアップのきっかけになればいいと思っています。

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Posted by eしずおかコラム at 2018年04月04日12:00 | 46.中原朋哉さん
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