48.華道家・辻雄貴空間研究所/辻雄貴氏(4)

2018年09月03日12:00
今月の物語の主人公は・・・
辻雄貴空間研究所代表・辻雄貴(つじゆうき)さん

48.華道家・辻雄貴空間研究所/辻雄貴氏(4)
 1983年 静岡県富士市出身。工学院大学大学院 工学研究科建築学修了。同大学在学中にいけばなと出会い、いけばな作家・竹中麗湖氏に師事。建築という土台の上に「いけばな」を展開することで、建築デザイン、舞台美術、プロダクトデザインなどの、既存の枠組みを超えた独自の空間芸術を演出している。芸能とものづくりの神の名を冠した「シャクジ能」では、移動舞台のデザイン・基本設計や舞台美術などを手がけるディレクターとしても活躍。2013年、フランスにて「世阿弥生誕650年 観阿弥生誕680年記念 フェール城能公演」の舞台美術を手掛ける。2015年「シズオカ×カンヌ×映画祭」のアーティスティックディレクターに就任。2016年、ニューヨーク・カーネギーホール主催公演では、いけばなを披露。カーネギー初の華道家公演となる。2017年、スペイン フェリペ6世国王夫妻来日時に、天皇皇后両陛下ご臨席のもと、浮月楼「月光の間」にて献花・室礼をおこなう。辻雄貴空間研究所代表。

辻雄貴空間研究所ホームページ


※聞き手は、(株)しずおかオンライン代表/海野尚史です。
※この記事は、全4回のインタビューのうちの4回目です。
≫第1回 竹中麗湖先生の「それはおもしろいから、やるといい!」
≫第2回 声がかかることは、すべてチャンスに!
≫第3回 20代のガムシャラな時代が財産に


・・・・・・・・・・・・・・・
|第4回 いけばなと能楽を融合するパフォーミングアーツに挑戦

海野
大倉慶乃助さんと一緒に、「シャクジ能」という新しい表現に取り組んでいますね。

はい。きっかけは、大倉源次郎さんの甥っ子の大倉慶乃助さんとの出会いです。大倉慶乃助さんは僕と同年代で、とてもいいおつきあいをさせていただいています。ある時ふたりで話をしているときに、いけばなとお能の勉強会をやろう、ということになって。そこから「シャクジ能」のアイデアが生まれました。

海野
そうでしたか。「シャクジ」の意味は?

シャクジとは、古来から日本各地で祀られてきた自然の精霊のことで、芸能とものづくりの神とされています。「シャクジ能」は、お能の型は崩さずに、野外を舞台空間にして、自然の精霊の力を借り、いけばなと能楽の世界観を融合する新しい形のパフォーミングアーツの試みです。

海野
自然も演出に取り入れるんですね。

48.華道家・辻雄貴空間研究所/辻雄貴氏(4)
シャクジ能の舞台

「シャクジ能」の舞台は、静岡の中山間地の竹や間伐材などを若者たちと一緒に切り出して、みんなで作っています。それらの活動も含めてひとつのパフォーマンスなんです。自然の豊かさを感じ、自然の素材を再生する「循環型アート」の実践でもあります。僕にとっての「シャクジ能」は、アウトプットとであり、同時にインプットでもある、とても大切なものなんです。

海野
屋外の竹を使った能舞台は幽玄さが際立って、興味が惹かれますね。今後の予定を教えていただけますか。

静岡市の料亭・浮月楼でシャクジ能を開催する予定です。現代の能楽を代表する人間国宝のひとり、梅若実玄祥さん、エグゼクティブプロデューサーの西尾智子さんを迎えて「浮月シャクジ能」を上演します。演目は、三保の松原を舞台にした『羽衣』です。ぜひ、静岡のみなさんに観ていただきたいです。

海野
静岡では馴染みのあるお話ですね。楽しみです。

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人間国宝の大倉源次郎氏との競演

もうひとつ、いま取り組んでいることがあって。都市空間の暮らしの中に山の恵みを届ける「カキトカザイ プロジェクト」といういけばなキットです。これは、静岡県の職人さんの力を借りて、静岡の中山間地の植物をパッケージにした「いけばなキット」を、 ECサイトを通じて届ける、いままでになかったギフトサービスです。

海野
おもしろそうですね。

はい。この企画は、児玉太郎さんとタッグを組んだプロジェクトになります。児玉太郎さんは、facebook Japanの元代表で、現在はアンカースター株式会社の代表取締役です。世界最大のクラウドファンディングサイト「キックスターター」のカントリーマネージャーでもあります。児玉さんは、海外のスタートアップ企業を日本に誘致しながら、さまざまな日本人の価値観をアップデートするプロジェクトを立ち上げています。そんな彼に「辻さんの社会に伝えたい思いはおもしろいけど、社会に受け入れられるには“下地”が必要だよ」と言われたんです。

海野
日常に「いけばな」の下地を作らないと?

「いけばな」を都会で暮らす人たちの生活の中に浸透させるには、手軽で、わかりやすい形にして見せてあげることが大事なんだと。「いけばなキット - カキトカザイ プロジェクト」は、児玉さんが社会への翻訳側を担ってくれて、僕はアート寄りの立場でプロジェクトを進行しています。これまでにないプロジェクトなので、ワクワクしています。「いけばなキット - カキトカザイ プロジェクト」を必ず成功させたいです。

海野
また新しいチャレンジですね。「シャクジ能」に「いけばなキット」。これからの辻さんの活躍がますます楽しみになりました。今日はありがとうございました。

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◆辻雄貴空間研究所・辻雄貴さんへのインタビュー/完



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Posted by eしずおかコラム at 2018年09月03日12:00 | 48.辻雄貴さん
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