今月の物語の主人公は・・・
「ミスター富士山」　實川 欣伸（じつかわよしのぶ） さん

實川欣伸（じつかわ よしのぶ）。登山家。1943年神奈川県出身、沼津市在住。1985年に初めて富士山に登頂して以来登頂回数を伸ばし、2010年には登頂1000回を達成。翌2011年には登頂1111回達成の偉業を達成し、日本山岳会長特別表彰を受ける。不眠不休による富士山四登山道連続登頂、8連続登頂、 日本橋を始点とした登頂、下田を始点として伊豆横断しての登頂、富士山を含めた3000m峰29座を29日間で完歩等、常に新しいことに挑戦し続けている。その後も記録を伸ばし、年間登頂5年連続200回以上、登頂回数は累計で1400回を超す。日本山岳会会員。


※インタビューの聞き手は、（株）しずおかオンライン代表／海野尚史さんです。
※インタビューは2013年7月25日に富士山富士宮口6合目宝永山荘にて行いました。（撮影／森 奈保）
※實川欣伸さんへのインタビューは全3回に分けて公開予定です。


　世界遺産登録を機に、日本人だけでなく海外からの観光客もが一度は登ってみたいと憧れる富士山。その頂に立つこと1487回（2013年7月25日現在）、途方もない登頂記録を今なお更新し続け「ミスター富士山」と呼ばれる登山家・實川欣伸さんに、富士山の虜になったきっかけ、登頂を続ける原動力、そして登り続けることで知る富士山の魅力などをうかがった。

｜富士登山は1日2回。毎年、年間200回を目指しています

―こんにちは。ご無沙汰しています。覚えていますか。

實川／もちろんですよ。あれから何年になりますか？

―18年です。前回（『静岡アウトドアガイド』（フィールドノート社）の「静岡の今を生きる」という人物インタビュー）取材させていただいたのが95年ですから。

實川／そんなになりますか。お互い歳をとりましたね。



―当時、實川さんは52歳。29日かけて日本横断登山を成功させた直後でした。インタビューの中で「50歳を過ぎると、今しかできないことが見えてくる」と語っていましたが、わたしもようやくその気持ちがわかる年齢になりました。

實川／そうですか。わたしは今年で70歳です。

―お世辞抜きで、70歳には見えませんね。今年は富士山が世界遺産に登録されましたから、例年以上にお忙しいのでは。

實川／登山よりも取材で忙しくなりました。多い日には、1日に4本もはいちゃって。昨日もAKBのみなさんと一緒に登る予定だったんです、メンバーの都合で延期になったけど（笑）。

―富士登山の達人でありミスター富士山として、すっかり有名人ですから。ところで、實川さんのシーズン中の平均的なスケジュールを教えてください。


實川／わたしが富士山に登るのは、6月から10月の5か月間です。毎朝6時30分頃に家を出て、8時頃に富士山五合目から登り始めて11時に山頂へ。午後1時に五合目まで下山し、それからもう1度登ります。月のうち20日は1日２回登って、1か月で40回。それを5か月続けて、年間で200回の登頂を目指しています。

―何年間くらい続けているのですか。

實川／今年で5年目です。2008年に仕事を完全に引退してからです。引退した時に、これから何をしようかと考えたんですけど、その時に「おもいっきり富士山でも登ってみよう」そんな気になった。その頃、イチロー選手の年間200本安打の連続記録がテレビで紹介されていたのを見て、「よし、富士山のイチローになってやろう」と思ったんですよ。それで年間250回という目標を立て、その年に248回登ったんです。



―2008年の記録は、いまでも實川さんの年間最高登頂記録ですね。今日もここに来る前に實川さんに電話しましたが、その時も富士山頂で電話に出られましたね。今日で何回目ですか？

實川／えーと（手帳を見ながら）、1487回目です。今シーズンでは70回目になります。


―突然ですが、ここで實川さんへの「10問10答」です。今シーズンの富士登山を考えている方へのアドバイスにもなるかと思いますので、よろしくお願いいたします。

實川／はい、わかりました。

1.好きな富士登山ルートは。
實川／須走口。7合目まで緑が多く、元祖6合目の山小屋の下に咲くヤナギランがきれい。

2.富士登山に必ず持参するものは。
實川／・笛（霧などでルートを見失った時に居場所を知らせるため）
・アルミ製レスキュー袋（軽くて温かい）
・テーピング用テープ（傷の手当だけでなく、靴のソールが剥がれたときなどにも応急処置できる）
・マスク（砂ぼこりが強い時や強風の時に呼吸を確保するため）

3.富士登山で好きな季節は。
實川／花が咲く8月。

4.最短登頂記録は。
實川／登り2時間10分

5.一年で一番多く登った回数は。
實川／248回（2008年）

6.山小屋でのおすすめの味といえば。
實川／カレーライス

7.富士山頂からの好きな景色は。
實川／晴れた日の星空、朝の影富士（満月が影富士の頂きに沈んでいく様子）

8.富士山頂のなかでも御来光の眺めのいい場所は。
實川／富士宮ルートの山頂すぐそばにある三島岳。御来光と影富士が同じ場所で見えるのはここだけです。　　

9.富士山を見るときのおすすめスポットは。
實川／・越前岳（愛鷹山山系）山頂から黒岳に向かう途中の富士見台からの富士山。
・御殿場口の宝永火口から見上げる男性的な富士山。

10.富士山に登ってよかったことは。
實川／予期せぬ人との出会い。特に1000回を越えてから、日本山岳会の方々など山関係の人だけでなく、冒険家の三浦雄一郎さんや皇太子殿下にもお会いできたことですね。



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