今月の物語の主人公は・・・
片 桐 義 晴 さん
※このインタビューは、全3回のうちの3回目です。
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片桐氏(右)と、聞き手・海野氏(左)
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◆プロフィール
片桐 義晴 (かたぎり よしはる)
1959年生まれ。1983年大学卒業後、情報誌出版社入社。1988年12月同社退社。1989年5月フリーのコピーライターとして独立、現在に至る。ラジオCM、ポスター、新聞広告、パンフレット等のコピーライティングから雑誌等の取材原稿など幅広く手がけている。静岡新聞広告賞2004 奨励賞、静岡県CMグランプリ ラジオ部門優秀賞、静岡新聞広告賞2011 大賞等を授賞。静岡コピーライターズクラブ会員
・静岡コピーライターズクラブ
http://www.shizuokacc.com
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撮影:大塚光一郎
(このインタビューは、2012年8月30日に行われました)
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(承前)
|コピーの仕事は年齢じゃない。実力の世界
―静岡コピーライターズクラブの発足が2002年です。今年でちょうど10周年。この10年で変化はありましたか。
片桐/ われわれコピーライター自身の高齢化ですね。男性会員の一番の若手が39歳。その彼も来月40歳になってしまう。
―静岡コピーライターズクラブの目的の一つに「若手の育成」を掲げていますが、会員の高年齢化が進む一方で、自分たちに続く若手がいないと。ところで、若い人にも仕事はあるんですか?
片桐/ 仕事はあると思いますが、生活できる収入を得られるようになるまでには、時間がかかるかもしれないですね。
―広告業界のマーケットが頭打ちだとして、既存の仕事はベテランのコピーライターが抱えてしいるとしたら、この業界に若手が参入する余地はない、という気もします。それともベテランが若手に席を譲る用意があるのでしょうか。
片桐/ それはわかりませんが、マーケットが頭打ちだから仕事がないというのは、考え方が違うんじゃないかな。そもそも、どんな業界でも実力があれば仕事は必ずあると思います。それに、最近ではどこでも新しいコピーライターが求められています。
―そうですか。
片桐/ 仕事の打合せの場で、広告代理店やクライアントの担当者から「どこかに若い人いませんかね」といわれるんですよ。「それを俺に聞くなよ」って。だから、若くても実力があれば、仕事はあります。
―実力があれば仕事はついてくる。おっしゃる通りです。たしかに年齢は関係ないですね。
|言葉は人を動かせる。そのことを子どもたちにも伝えたい
―コピーライターの腕の見せ所である「言葉」について伺います。糸井重里さんや仲畑貴志さんなどが活躍していた頃は、広告コピーが流行を作るチカラを持っていたと思います。今でも言葉のチカラは失われていませんか。
片桐/ 今でも言葉にはチカラがあると思います。ただし、表現方法が変わってきている。クライアントだけでなく生活者からも、ストレートな表現を求められるようになってきました。「夢を売るより、モノを売れ」です。
―それは、生活者の側が夢を共有できなくなってきているということもあるかもしれませんね。
片桐/ 言葉が人を動かすということでは、こんなことがありました。静岡大学でコピー大賞のワークショップを開き、ぼくが富士山静岡空港開港のポスター用に書いたコピーを紹介しながら説明した時のこと。ワークショップに参加していた女子学生のひとりが、すごく驚いた反応を示したんです。その学生は、北海道出身の学生でした。よくよく理由を聞いてみるとこんな答えが返ってきました。
「わたしは、札幌の街でこの富士山静岡空港のポスターがふと目に入って、富士山がわたしを呼んでいる、静岡に行こう、と決めたんです」
と。それで静岡大学に進学し、そのワークショップに参加していた。本人もビックリしていましたが、彼女以上にぼくが驚きました。この仕事は、自分の仕事がどれほど人に届いているのか、ふだんはなかなか見えないけど、やっぱりどこかで人を動かしているんだ、つながっている、ということを実感しました。現にこの学生にとっては、ぼくの手がけたコピーが人生を左右するほどのきっかけになっていた。それが、コピー大賞のワークショップでつながったというところにも何か感じるものがありました。
―それは象徴的なできごとですね。
片桐/ いまでも言葉は人を動かすチカラを持っていますし、言葉で人はつながると実感した出来事でした。言葉にはそれだけのチカラがあると信じていますから、下手に書くわけにはいかないですし、責任をとれるように、自分の言葉で書こうと心がけています。
―これから実現してみたいことはありますか?
片桐/ いつか小学生に教えてみたいと思っています。小学生や中学生に、ワークショップを通じて「世の中にはこんな仕事もあるんだよ」「仕事って、こんなに楽しいものなんだよ」って伝えてあげたい。それから、コピーに限らず表現することの面白さを教える機会を増やしたい。自分の考えを表現することで、人を動かすことができるということも教えてあげたいんです。人に何かを教えることの面白さに自分が開眼しちゃったことも大きいんだけど、子供たちのキラキラ輝いた目を見るとすごく幸せな気分になるんだよね。陳腐な言い方だけど、自分の仕事が誰かの役に立っている、どこかで誰かが幸せになっていると思いたい。自分が必要とされていると思えることに取り組んでいきたいです。
―これからの活躍がとても楽しみです。
片桐/ 期待していて、活躍するから(笑)
―はい、楽しみにしています。今日はありがとうございました。
(第2回 ライター・片桐義晴さん 了)
※このインタビューは、全3回のうちの3回目です。
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