18.就職支援財団理事長/満井義政氏(2)

2013年02月18日12:00
今月の物語の主人公は・・・
就職支援財団理事長 満井義政 さん
18.就職支援財団理事長/満井義政氏(2)

◆プロフィール 満井義政(みつい よしのり)さん
1948年、静岡市清水区生まれ 。中央大学経済学部卒業と同時に株式会社アルバイトタイムスを創業。 代表者として2004年まで求人情報誌はじめ人材派遣、人材紹介などの経営に携わる。 その間、社団法人全国求人情報協会の理事長に就任(95年から03年)。2006年就職支援財団を立ち上げ、大学生を中心に就職をテーマにした支援プログラムを運営。 2007年より静岡大学理事(非常勤)、2009年より静岡銀行監査役(非常勤)。
◆就職支援財団 http://www.shushokuzaidan.or.jp

※この記事は、全6回のうちの2回目です。 (1)を読む
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|価値観の共有が弱まると、社会を支える力も弱まる?

―就職支援財団の目的は若い人たちの育成ですね。満井さんには、若い人はどのように見えますか。

満井/さきほど、「働くことは善である」とか「自分のため」「社会のため」といった、その世代が共有できる価値観があったとお話ししました。最近は、中身は別にして、若い人たちに共有される価値観そのものの力が弱くなっている気がします。でも、それはまずい。なぜなら、大げさに聞こえるかもしれませんが、日本が立ちゆかなくなると思うからです。

―共有できる価値観が弱くなると、日本がダメになる?

満井/そう思います。これからの社会を支えていくのは彼らです。その若い人たちが、少子化で数が減ってしまう。このことはとても重要です。僕が不安なのは、若者たちのパワーそのものが弱くなっていると感じること。パワーとは総量、数かける一人ひとりの持っている力です。

―もう少し具体的に教えてください。

満井/「パワー」を言い換えれば、価値観のことです。「価値観=方向性」×「若者の総数」=「発揮できる力」。同じ世代の人たちが、個々の力を同じ方向性、ベクトルに合わせることで、力は分散されることなく大きな渦(パワー)を作り出せるはずです。少子化で母数が減ることは避けられませんが、さらに一人ひとりのモチベーションの源泉につながっている共有できる価値観まで弱くなれば、若者たちが発揮できる力にも影響を与えるのではないでしょうか。

―結果として、社会を支える力が弱くなると。

満井/中国や東アジアの若者たちが大量に、そしてモーレツな勢いでビジネスの世界に参加して日本人と一緒に仕事するようになる時代に、これではやっていけません。勝ち負けではなく共存すればいいんですが、今のままでは共存すらできないのではないかと・・・。本当に心配です。

18.就職支援財団理事長/満井義政氏(2)

―数が減っていく中で、若者たち一人ひとりの力がこれまで以上に強くならないと、グローバルな時代に日本の影響力は維持することができないということですね。中身は何であれ、力を発揮する際に、若者たちが共有できる価値観が支えになると。

満井/そうですね。そう思います。

―バブル以降の日本が立ちゆかなくなってきた時期と、「社会のために」という若者たちの登場の時期が重なります。若者たちにとって「社会」と「日本」は、どのように重なっているのでしょうか。

満井/どうなんでしょうね、よくわかりませんが、「社会のために」と言っていられる時期は、いつまでも続かないんじゃないですか。そろそろ4回目の大きな波、価値観の変化がやってきて、「社会のため」ではない働き方を目指す若者たちが台頭してくるはずです。今は、それまでの過渡期。次にどんな価値観が共有されるのか、楽しみでもあります。でも、当事者である若者たちは、気づいていないと思いますよ。

―そのような状況下で、若者たちを支援する就職支援財団としてどんな取り組みをしていますか。

満井/二つあります。プログラムの運営と奨学金の提供です。奨学金は4年間で止めて、いまはプログラムの運営に絞っています。奨学金の提供を止めたのは、お金を有効に使うにはトレーニングが必要であることがわかったからです。それから、お金を支給しなくてもプログラムの運営を工夫すれば、若者たちの育成や彼らが新しい価値観を見いだすきっかけは作れるだろうと考えたからです。

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|問題提起から始まる行動が、自主自立につながる

―財団が描く人材像とは、どんな若者ですか。

満井/当初から、「自主自立できる人材」を育てることを目的としています。これは一貫しています。自主自立できる人というのは、自分で考え、決断し、実行できる人。そんな人を育てられるプログラムを試行錯誤しながら運営してきました。

―自主自立できる人材を育てるうえで大切なことは、何でしょうか。

満井/確証はありませんが、「問題提起」ができることでしょうか。人が問題提起に気づくきっかけやそのタイミングは何だろうと、支援プログラムを作る際にいつも考えています。

―「問題提起」とは、どのようなことを指していますか。

満井/人は、何かやろうとしている場面や日常的な作業の中でも、ふと「これってなんだろう?」「このやり方で本当にいいのかな?」などと、疑問が生まれることがありますよね。その「疑問」こそが「問題定義」です。
同じものを見ていても、同じ体験をしても、疑問を感じる人と感じない人がいます。疑問を感じる人は、なぜ感じるのだろうか・・・そのことが、ずっと僕の「疑問」でした。幼少期の環境なのか、小中学校での先生や友人、本との出会いなのか? 今でも答えは見つかっていません。
当たり前になっている習慣や地域のしきたりが大人たちの常識になっているときに、子どもが「なぜ?」と投げかける疑問や、先生の教える「正しいこと」に対する素朴な疑問などは、この問題提起の代表的事例と言っていいと思います。

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―確かに、同じものを見て同じ体験をしても、そこに疑問を感じたり、教訓を引き出す人もいれば、何ごともなかったかのように済ませてしまう人もいます。人により反応はさまざまです。生きていくことは、その繰り返しですから、「問題提起」の中身や総量が、自主自立できる人材を育てる上で大きな影響を与えそうですね。

満井/そう思います。「問題提起」から「考える」が始まり、さらに「行動する」に進んでいくのだと思います。「考える」や「行動する」からスタートしても「問題提起」は始まらず、それでは本質はつかめません。ですから、「わからないこと(疑問)があるということがわかった」というのが、まさに問題提起になるのではないかと考えます。

※続き(第3回を読む)

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Posted by eしずおかコラム at 2013年02月18日12:00 | 18.満井義政さん
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