今回の主人公は・・・
砂田麻美(すなだ まみ)さん
ガン宣告を受けた父親の半年間にわたる“終活”記録。娘としての自分と、監督としての自分の二つの視点で描かれた心温まるドキュメンタリー映画『エンディングノート』。監督デビュー作となる本作品の監督砂田麻美さんに、映画について、そして近しい人の「死」や家族について、お話をお伺いしました。
※聞き手は、(株)しずおかオンライン代表/海野尚史です。
※この記事は、全3回のインタビューのうちの3回目です。
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※写真撮影:森島吉直
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第3回 『人間の哀しみとおかしみ』
海野/ドバイ国際映画祭ムハ・アジアアフリカ・ドキュメンタリー部門での受賞、おめでとうございます。
砂田/ありがとうございます。
海野/海外での上映でも、笑いと嗚咽が聞かれたようですが…。
砂田/笑いも泣く場面も、日本も海外も変わりませんね。是枝監督も言われていますが「人間や家族の哀しみとおかしみ」は、本当に世界共通なんだな、と実感しました。宗教や家庭環境の違いはあっても、家族の内側にいる時には気づかないものが、他人の家族を通して見せられた時に、はじめて自分にもそういう体験があることを気づくのかな、と思いました。
海野/12館で封切りされた初監督作品が話題になり、全国で上映されるまでになりました。いま、お父さんに伝えたい言葉はありますか?
砂田/伝えたいことは…とくにないです。作り手の自分としては。
海野/では、娘として伝えたいことは?
砂田/子供としては、心の中でいろいろ思うことはありますね。でも、それは内緒…ちょっと教えられないです(笑)。
海野/エンディングにかかる「ハナレグミ」(永積崇)の「天国さん」という歌もよかったですね。映画を自然に温かく包む音楽でした。選んだのは砂田さんですか?
砂田/「ハナレグミ」さんにお願いしようと決めたのはわたしです。
海野/映像に歌が入った時にはどんな印象でした?
砂田/最初「天国さん」を聞いたときは、すごくびっくりしました。ハナレグミさんに楽曲の制作をお願いする以前に、既に「天国さん」という曲は制作されていたんです。新しいアルバムに入れる予定のその曲を、永積さんから主題歌として提案していただいて。最初「天国さん」を聞いたときは、娘としての自分にとってはあまりに直球の曲でしたので、一瞬とても驚いたんです。制作中、ずっと仮に入れていたハナレグミの音楽は、映画の内容からは距離感のある内容だったということもあって。ただ数回聴いているうちに、ああこれでいいのだと、90分間ストイックに被写体と撮影者の距離を保ってきたけど、最後はわたしの気持ちをこの曲に、永積さんに托そうと決めました。
海野/最後に静岡のお客さまにメッセージをいただけますか。
砂田/この映画には、100歳近くの方から小さな子どもまで、幅広い年齢の人たちが登場します。静岡のみなさまにも、自分をとりまく「これまでのこと」と、そして「これからのこと」にあてはめながら観ていただけたらうれしいです。たった90分の映画ですが、この映画がほんの少しでも何かのお役に立てればいいなと思います。
海野/今日はありがとうございました。これからの砂田監督のご活躍を楽しみにしています。
砂田/ありがとうございました。次はフィクションを作りたいと考えています。これからも応援をよろしくお願いします。
(このインタビューは、2012年1月7日に行われました)