今月の物語の主人公は・・・
womo編集長・松村 麻子(まつむらあさこ)さん
まつむら あさこ。1980年東京都生まれ、上智大学経済学部卒。野村證券株式会社を経て、2004年アルバイトで株式会社しずおかオンライン入社。静岡地域密着型ブログサイト「eしずおかブログ」の編集長を経て、2010年10月より静岡を楽しむ女性のためのフリーマガジン 「womo」 編集長。テレビ静岡「てっぺん静岡」コメンテーター。2012年男児を出産、現在働くママでもあります。
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womo編集長 松村麻子のブログ「みおつくし帖」
※聞き手は、(株)しずおかオンライン代表/海野尚史です。
※この記事は、全3回のインタビューのうちの3回目です。 ≫1回目はこちら ≫2回目はこちら
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-仕事をする上で大切にしていることは?
松村/自分の仕事を通じて、誰かの生活を少しでも豊かなものにできたらいいなと思っています。そのために、当たり前だと思えるようなことでも「ちょっと待てよ?」と疑うように心がけています。
他人が当たり前だと話していることについてもそうですが、特に、自分が当たり前だと思っていることを、今一度あやしんでみる。なぜなら、まだまだ自分の知らない世界がたくさんあるはずだから。
先人の本を読んだり、話を聞いたり、自分の当たり前の幅を広げる努力は当然しつつも、常に自分の知識が浅はかであることを前提に物事を考えるようにしています。偉大なサービスをみると、iPhoneにしてもAmazonにしても、当たり前という常識を覆していますよね。
-たしかにそうです。でも現実は、上手くいかないことも多いですよね。そんな時の自分なりの対処法はあるのですか?
松村/困ったときや壁を感じたときは、本を読みます。
-脱出法を授けてくれるバイブルがある?
松村/いえいえ。バイブルはありませんが、書店に行くと、いろいろな経営者が自身の経験をまとめた本がたくさんありますよね。中にはうまくいかなかった時のことも多く書かれているので、その都度読んでみる。
自分が直面している問題の答えがあるわけではないですが、世間で名経営者として尊敬されている人にもこんなにいろいろな悩みがあり、失敗をしているんだと知ることで、「わたしももうちょっと頑張ってみよう」「明日、また話をしてみよう」という前向きにな気持ちになれるんです。あくまでも対症療法ですけれどね。
-では、根本的に解決するための方法はありますか?
松村/実際の仕事の現場では、上手くいかないことの方が多い。それならば始めから、「上手くいかない状態がふつうなんだ」と思うようにしています。そうすれば、上手くいかないからといって思い煩うことは少ないですから。
昔はこうはいきませんでしたが、子どもを産んで変わったのだと思います。子どもは理不尽の固まりみたいなもので、親の思う通りにはなりませんよね。だからといって、いちいち悩んでいる暇はないですし。いちいち立ち止まって原因を突き止めようとするよりも、とりあえず別の方法を試してみる方が早い。こう考えられるようになったのは、子どものおかげです。
-結婚して、出産して、いま育児をしながら『womo』の編集長として活躍している。仕事と家庭の両立はどうしているのですか?
松村/両立はしていません。バランスもとっていません。一時期、うまくやろうとした時期もありましたが、結局できませんでした。予定を立てて子どもを迎えに行こうとしても、だいたい遅れてしまう。ひとり残された子どもは、大泣きしている状態。「これでは母親失格」と思った時期もありました。でも、それを意識し始めるとストレスになってしまうんです。そんなお母さんは多いと思います。
松村/両立とかバランスを意識しすぎると、どちらも上手くいかなくなってしまいます。その結果、仕事と育児のどちらかひとつを選べ、みたいになりがちですよね。そうなると、育児は辞められませんから、「仕事を辞める」という究極の選択になってしまうと思うんです。
そんな時、どなたかから「バタバタしていて、いいんじゃんない?」といわれてふっきれました。バタバタ自転車をこいでいる自分も、職場で「お先に」と声をかけながらバタバタ仕事を片付けて遅れて迎えにいく自分も、それでいい。いまはそういうふうに気持ちを切り替えていますね。
-お母さんになって、仕事にプラスになったこともあるのでは?
松村/出産することで、「きちんと生活をする」ことができるようになりました。朝起きて、ご飯を作って食べて、子どもの世話をして、買い物をして、掃除して。このふつうの生活の体験は、サービスを作る上でとても役立っています。
仕事仕事の一辺倒の時は、私たちのサービスの使い手である生活者が本当に何を必要としているか、体感することができませんでした。でも、今はリアルな生活者の1人として、以前よりも実感を持ってサービスを開発することができるようになったと思います。
女性がビジネスに優位だと思う点は、多くの場合、女性がこの「生活をきちんと送る」経験を、男性よりも多くしていることにあると思います。私の仕事はBtoCなので特にそうのですが、たとえBtoBの仕事に就いていたとしても、顧客の先には必ずエンドユーザー、つまり生活者がいるわけですから。子育ての体験は、仕事にとってマイナスどころか多いにプラスだと思います。
-最後に、『womo』編集長としてこれから取り組んでみたいことを教えてください。
松村/『womo』という媒体を通じて、働く女性や、育児と仕事を頑張っている女性が、もっとストレスなく働けるように、何か変化を起こしてみたいです。
もうひとつ、『womo』でアンケート調査などを行うと、今の女性は何か環境を変えたいと思いつつも自分で選択することに億劫な方が多いなと感じることがあります。昨年
「womoシンデレラナイト」という体験イベントを開催したのですが、これに参加した方から「イベントをきっかけに習いごとを始めた」という声をいただきました。『womo』を通じて、同じように自分一人では一歩を踏み出せなかった方が、ちょっと自分に自信を持つようになって、出会いがあって、小さな一歩につながるような後押しをしていきたいです。
2013.9.23に行われた「womoシンデレラナイト」。
右は「シンデレラコンテスト」優勝の繁田さん(
インタビューはこちら)、左が松村編集長
-今日は初めて聞くお話があって非常に楽しかったです。2014年も『womo』に期待しています。ありがとうございました。
松村/こちらこそありがとうございました。