34.AOI Brewing/満藤直樹氏(2)

2014年11月27日12:00
今月の物語の主人公は・・・
「AOI Brewing」・満藤直樹(まんどうなおき)さん

34.AOI Brewing/満藤直樹氏(2)

 大阪府出身、44歳。2014年6月「AOI Brewing」(アオイブリューイング)開設。2014年10月20日、併設のレストラン「BEER GARAGE」(ビアガレージ)をオープン。

「AOI Brewing」(アオイブリューイング)

◆「BEER GARAGE」(ビアガレージ)
住所:静岡市葵区宮ケ崎町30番地
電話:054-294-8911
火曜休/平日:17:00~23:00、土曜:15:00~23:00、日曜:15:00~22:00


※聞き手は、(株)しずおかオンライン代表/海野尚史さんです。
※この記事は、全2回のインタビューのうちの2回目です。
≫満藤さんのプロフィールと1回目のインタビューはこちら


・・・・・・・・・・・・・・・

|地ビールの売り上げがアップした要因は?

-1994年の酒税法改正時に第1次「地ビールブーム」がありました。ぼくも、雑誌の取材で県内の地ビール醸造所を取材する機会がありました。でも、その後ブームは去ってしまった。それが2004年頃を底として、ふたたび地ビールは売り上げがアップしています。要因はなんですか?

満藤/理由は二つあると思います。
ひとつは、国産地ビールの品質が世界に負けないほど高くなったこと。94年の規制緩和で、各地に大小さまざまなご当地ビールが誕生したのですが、ビール造りはどこも初めて。みんな手探り状態でしたから、品質はさまざまで、技術も低かったのだと思います。

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満藤/そんな状況の中で試行錯誤の努力を続けた醸造所は、技術の追求、蓄積により醸造技術が向上し、高品質なビールを生産できるようになりました。その一方で、低レベルの醸造業者は淘汰されていったのです。

品質向上に努めた醸造所は、クラフトビールの世界大会で数々の賞を受賞するまでになりました。それは、品質の確かさの裏付けになっていると思います。

-つまり、国産でも高品質のおいしい地ビールが増え、再評価につながったということですね。

満藤/もうひとつは、生活スタイルが変わり、食生活におけるお酒の選択肢が増えたこと。海外産ビールの普及により、バリエーションに富んだ高品質なビールを楽しむ人が増えたことがあげられます。それらのふたつの要素が、いまの地ビール人気につながっているのではないでしょうか。

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|誰よりも静岡を愛しています(笑)

-満藤さんは大阪出身とお聞きしました。

満藤/はい。2001年、31歳の時に土木関係の仕事の転勤で静岡に来ました。

-当時の静岡の印象は?

満藤/正直なところ最初は、大阪と比べて小さな街だな、田舎だな、と思いました。なにごともゆっくりしているし、人はおっとりしている…。それが第一印象。

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満藤/でも静岡生活が3年目に入ったころから、逆に大阪に帰ると、せかせかした人のスピードや、平気で路駐をするようなよろしくない風紀がイヤだな、と思うようになったんです。

-そうですか。

満藤/それから、静岡市は大阪にも東京にもアクセスがよく、気候もいい。海も山もあって、食材も豊富。自転車で10分も走ればどこにも行けるコンパクトさも住みやすさにつながって、すべてのバランスがいい。出張じゃなくて、転勤で実際に暮らしたから、そんな静岡の良さに気づけたんだと思います。でもいちばん気に入ったのは、マナーがよくて親切な静岡の人の良さですね。

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-そういってもらえると、静岡人としてはうれしいですね。

満藤/いまは、静岡市以外には住める気がしないです。誰よりも静岡を愛しています(笑)。地元の人よりもぼくの方が、静岡のこと好きなんじゃないかな。


|そのお店に行かなければならない理由を提供し続ける

-2007年に飲食店を始めてから十余年。この間、静岡の街は変わりましたか?

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満藤/飲食業でいちばん目につくのは、お店の入れ替わりの激しさです。それに、最近はそのスピードが早くなっている。

-それはぼくも実感しています。

満藤/静岡市では週末と平日で、街に出る人の数に数倍も差があるように見えます。そんな街の姿を見ていると、静岡市は飲食店を経営するには厳しいエリアだと感じます。リーマンショック以降、景気は激しく落ち込みましたし、長い目で見てデフレの状態がずっと続いていると思います。

-そんな静岡市でさらに新しいお店を開いたわけですが、満藤さんはどんな店作りを目指しているのですか?

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満藤/外食産業は、そもそも景気に左右されやすい仕事です。誰だって生活に余裕がなければ、外で食事しようとは思わないですよね。ですからぼくは、いかに景気に影響されない飲食店を作るか、をいつも考えています。

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満藤/大切なことは、常にそのお店に行かなければならない理由をお客さまに提案し続けること。なかなか難しいんですけど。


|「これしかない!」でやっていく

-最初からそのような考え方だったんですか?

満藤/いえいえ、たくさん失敗して気づいたんですよ。最初は、お店に何もかもそろえないとお客さまは来てくれないんじゃないか、と過剰に心配性でしたね。メニューひとつとっても、ビールだけじゃなくてワインもおいておこう、ウィスキーもあったほうがいいんじゃないか…と。

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満藤/それが結果、大きな投資となって経営の負担になりますし、結局でき上がってみると、ほかのお店と少しも変わらない特徴のないお店になっていました。場所と名前が違うだけで、お店に並ぶものはみんな一緒。

-心配しすぎて、個性が無くなってしまう。

満藤/結局価格競争になり、お客さまからみれば、そのお店に行く理由がなくなってしまいます。競争に巻き込まれないためにも、専門性を高め、ほかのお店とは違う何かを確立した方が長く続くんじゃないかと、ぼくは考えています。

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満藤/思い切って“これしかない!”というお店の方が、お客さまにはわかりやすく、認知されやすいのではないかと。

-“これしかない!”というところを認めてくれるファンに支えられるお店がいいですね。お客さまもお店もしあわせですよね。

満藤/ぼく自身は、自分が造るものであってもそうでなくても、このエリアにないものを提供していきたいと思っています。

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満藤/一時期、国産ワインを提供するお店もやってきましたが、中途半端はやめて、ビールの専門分野でやっていこうと決断しました。ビールを自分のところで造り始めたので、これからはビールをもっと広めていきたいです。


|地元に愛されながらいつまでも飲み継がれるのが夢

-この場所に醸造所とお店を構えたことで、浅間通り商店街をはじめ、地元の期待も大きいんじゃないですか。

満藤/そうですね、周りからはそういわれていますけど…。正直なところ、うち一店舗で街の人の流れを変えられる力はありません。ただうちをきっかけに、ほかの空き店舗にも新しいお店が入って、人が戻ってくれるとうれしいです。

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アオイブリューイング併設のお店「BEER GARAGE」(ビアガレージ)


満藤/それから、県外から静岡市に来る人を増やせるようになりたい。地ビール醸造所があるおかげで、県外からわざわざ来店してくれるお客さまもいるんですよ。おいしいビールを造って、アオイビールのネームバリューを全国的に広めたい。それが今後のテーマです。

-満藤さんの次の夢は?

満藤/大きな夢は持っていません。現在の生産量が年間4万リットル。それをこの工場の限界である、年間7~8万リットルまで増やしていきたいです。

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満藤/造る工程でわがままが言える、そのくらいの規模で、長く造り続けることが今の目標です。おいしい地ビールを一所懸命に造って、地元の人に愛されながらいつまでも飲み継がれる、そうなれたらうれしいですね。

-静岡の地酒も、いまでは全国にファンがいるまでに育ちました。次は、静岡の地ビールを全国に知らしめて、「AOI BREWING」目当てに全国から人が集まるようになってください。楽しみにしています。今日はありがとうございました。

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◆AOI Brewing・満藤直樹さんへのインタビュー/完


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Posted by eしずおかコラム at 2014年11月27日12:00 | 34.満藤直樹さん
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