今月の物語の主人公は・・・
大 石 直 哉 さん
◆プロフィール
Webサービスやモバイルアプリケーションの企画、デザインなどを手がける
株式会社ドッグラン代表取締役。AppleからiPadが発表されて以降は、電子書籍のデザインと電子書籍ソリューションの構築を主な業務として取り組んでいる。
※このインタビューは、全3回のうちの2回目です。
(1)を読む/
(3)を読む
/////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
|電子書店に求められるものとは
―電子書籍端末を用意したら、次は肝心の電子書籍を購入しなければなりませんね。電子書籍を販売する電子書店には、どんなお店があるのですか?
大石/2012年11月の電子書籍端末「キンドル」の発売に先だって、アマゾンでは電子書籍を売る「キンドルストア」がオープンしました。日本語の書籍は、約5万点からのスタートです。一方で、すでに国内には日本語の書籍点数ではキンドルストアを上回る電子書店があり、利用者もいると思います。
―電子書店には、他にはどんなお店があるのですか?
大石/現在、最も品揃えの豊富な電子書店は、凸版印刷グループのBookLive(ブックライブ)です。点数は、約10万点。コミックが充実しているeBookJapan(イーブックジャパン)が、6万5千点。紀伊国屋書店BookWebが、約5万点。他にもいろいろな書店があります。
―電子書店には、書籍点数の充実のほかにどんなことが求められるのでしょう?
大石/大きく分けて三つあると思います。まず、リアル書店よりも品数が豊富であること。次に、検索性に優れていること。最後に、価格の安さではないでしょうか。
―品数の豊富さでいうと、10万点以上を扱うBookLiveが、電子書店の競争では一歩リードといったところですね。
|「レコメンド」の強みをもつアマゾンの優位性
大石/今後はキンドルストアが伸びてくると思います。アマゾンはもともと検索精度が高く、それからこれはとても重要なのですが、ビッグデータを活用したレコメンドの精度の高さで他のサイトを大きくリードしています。「レコメンド」とは、利用者の傾向を分析して、それぞれの趣味や嗜好に近似した商品を推薦してくれる機能のことです。これによって、膨大な品数の中から自分が探している本をストレスなく見つけられ、自分も知らない自分好みの本と出会える確率が高い。アマゾンのレコメンド力は、顧客満足に直結し、販売にも大きく貢献しているはずです。今後、国内の電子書店も、検索力やレコメンド力を高める必要があると思います。
アマゾン「キンドルストア」
(画像をクリックするとキンドルストアのページに移動します)
―たしかにアマゾンのレコメンドは、こちらの弱みをついてきますね(笑)、怖いほどに。つい「ポチッ」としてしまうことがあります。
大石/アマゾンは、これまでにEC(ネット取引)で培ってきた強力な個人消費者向けのCRM(顧客情報管理手法)を持っています。コンシューマー向けレコメンデーションエンジンとしては最高のものかもしれません。電子書店の力の差は、顧客データの解析力や書店サイトのUI(ユーザーインターフェース)などの差から生まれるのではないかと思います。
―電子書籍は、紙の本と違い再販売価格維持制度の対象外です。つまり、電子書店側で価格を決められるので、読者は価格の安さを期待するはずです。ところで、現在の電子書籍の販売価格はどのような状況ですか?
大石/わたしが調べた範囲に限られますが、価格差はそれほどないようですね。出版社や書店側の事情はわからないのですが、国内の電子書店もキンドルストアも、値段も品揃えも変わらない状態になるのではないでしょうか。
―ということはやはり、電子書店の力の差は、顧客データの解析力や電子書店サイトのUIなどの差であるといえそうですね。
※このインタビューは、全3回のうちの2回目です。
(1)を読む/
(3)を読む
大石直哉さんによるコラム「電子書籍スタートガイド」全7回を公開中