31.常葉大学経営学部教授/大久保あかね氏(1)

2014年07月10日12:00
今月の物語の主人公は・・・
常葉大学 経営学部教授・大久保あかね(おおくぼあかね)さん

31.常葉大学経営学部教授/大久保あかね氏(1)
 1963年名古屋生まれ、奈良女子大学文学部卒業後株式会社リクルート入社、退職後熱海に転居して1996年から旅行情報誌じゃらんの熱海担当に。1998年立教大学観光学研究科博士課程前期課程に一期生として社会人入学、後期課程に進み2003年博士号取得。2006年より富士常葉大学(現:常葉大学)に在職。

常葉大学


※聞き手は、(株)しずおかオンライン代表/海野尚史さんです。
※この記事は、全3回のインタビューのうちの1回目です。
≫インタビュー2回目はこちら
≫インタビュー3回目はこちら

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 富士山が、世界文化遺産に登録されて一周年。静岡市では三保の松原が一躍脚光をあび、世界遺産効果を実感しましたが、富士山周辺の観光全体としては、どんな一年だったのでしょうか?初年度を振り返り、海外・国内からの誘客増を目指す静岡県内の観光の現場と課題について、観光学が専門の常葉大学経営学部教授の大久保あかね先生にお話をお聞きしました。
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|2020年には訪日観光客数2,000万人を目標に。

-今日は、観光に出かける人の視点ではなく、お客さまを迎える側の視点でお話を伺いたいと思います。よろしくお願いします。

大久保/よろしくおねがいします。

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-日本政府観光局(JNTO)の発表によると、訪日外国人観光客数は2013年に年間1,000万人を超えました。今年1~5月は520万3300人。昨年を上回るペースだとか。順調に伸びていますね。

大久保/そのようですね。

-2014年4月の旅行収支(外国人観光客が国内で使う金額から、日本人が海外で支払う金額を差し引いたもの)も黒字に転じて、5月には訪日外国人観光客数が過去2番目に多い109万人を達成。好調に推移しています。

大久保/新聞報道は単月での結果ですが、たしかに訪日外国人観光客数は増えているように思います。しかし観光庁は、東京オリンピックの開催される2020年に2,000万人を目標に掲げていますから…。

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|富士山を起点に小さな観光スポットを作る

-まだまだこれから…、と。そのような中、富士山が世界文化遺産に登録されて1年が経過しました。県民としては静岡県への外国人観光客が、どの程度増えたのか気になるところです。この一年を振り返ってみて、大久保先生は、どのように受けとめていますか?

大久保/「静岡県側には、やっぱり来なかったな」というのが正直な感想です。先日の新聞報道でも山梨県側は、30数%増えたというのに、静岡県側はとても少なかったようです。

-「やっぱり」というのは?

大久保/この一年を見る限り、静岡県側の外国人観光客誘客の新しい取り組みが、間に合わなかったという印象を持っています。

-誘客の新しい取り組み?

大久保/外国人観光客へ富士山以外に立ち寄る場所を効果的に提示できなかった、または、静岡県を含めた観光ルートがインターネットの検索でヒットしにくかったのではないでしょうか。

-なるほど。

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大久保/常葉大学がある、富士市の地元の方とお話ししていると、「ここには魅力的なものがない」という言葉をよく聞きます。ちょっと視点を変え、埋もれているものや、地元の皆さんが気付いていない魅力を再発見する活動が大切です。どの地域にも新鮮な観光資源が、まだまだたくさん眠っていると思います。

-はい。

大久保/世界遺産登録の前に県東部地区の商工会議所青年部でワークショップの講師をする機会がありました。

-どんな講座だったのですか?

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大久保/「世界遺産になったら観光客が自動的にたくさん押し寄せると思うかもしれませんが、観光客は魅力的な情報がなければどこにもたどり着きません。皆さんの地元には富士山というすごいキラーコンテンツがあるわけですから、富士山から「ちょっと足を延ばしたくなる」小さな観光スポットをたくさん作ることに取組んでください。小さな魅力も富士山を起点にたくさん繋げていくことで観光客の行動範囲を広げることができます。富士山に「ちょい足し観光」を考えましょう」というワークショップでした。

-どんな反応でした?

大久保/残念ながら説得力がなかったようで、ほとんど動きはありませんでした。その時に参加されていたのが、商社や製造業の方が多かったのもあると思います。「うちは観光業じゃないから」という固定観念を打破できなかったのが残念です。

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-立ち寄る場所がないと、目的地以外はスルーされてしまうでしょうし、一度来ただけで「ここはもう充分」と思われてしまうかもしれませんね。

大久保/そうなると、魅力を伝える機会を永遠に失ってしまうのでもったいないです。


|アメリカやフランスからの観光客には伊豆半島も遠くない

-遠くからわざわざやってきてくれた海外の方に、念願の富士山に登った後は、ここに温泉がありますよとか、生粋の和食ともいえる郷土料理がここで食べられますとか、ちょっと足を延ばして駿河湾の海の幸も味わってみませんかとか、静岡県の魅力をいろいろ体験してほしいですよね。

大久保/はい

-そして、静岡県も日本も大好きになって帰ってもらえたらうれしい。伊豆半島も、充分に観光ルートに組み込めるエリアですし。

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大久保/そうです。山梨県に対して、富士山の静岡県側は宿泊施設が少ないのが、外国人観光客が増えない一因と説明されることがあります。でも静岡県全体をみわたすと宿泊施設は、4500軒以上もあり、全国で3番目に多いのです。

-3番目ですか。

大久保/富士市や富士宮市に住んでいると、伊豆は遠いと思うかもしれませんが、アメリカやフランス、中国などからやってくる観光客にしてみれば、2時間や3時間の移動は、さほど気にならないはずです。

-そうですね。

大久保/それに、伊豆半島といっても、熱海と湯ケ島、下田、西伊豆、沼津、それぞれまったく違う魅力がありますよね。それらの点と点を組み合わせれば、特徴あるコースを作ることができます。

-たしかに。ちょっと視野を広げるだけで、静岡の観光につながりそうなスポットがそろっていますね。

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Posted by eしずおかコラム at 2014年07月10日12:00 | 31.大久保あかねさん
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