17.しずおか地酒研究会主宰/鈴木真弓氏(3)

2013年01月28日12:00
今月の物語の主人公は・・・
フリーライター・しずおか地酒研究会主宰 鈴木真弓 さん

17.しずおか地酒研究会主宰/鈴木真弓氏(3)


静岡市出身・在住。地域の酒・食・歴史・モノづくり文化を追求し取材歴30年弱。2008年からドキュメンタリー映画『吟醸王国しずおか』を自主制作中。
▼連載コラム「杯は眠らない」 
17.しずおか地酒研究会主宰/鈴木真弓氏(3)


※この記事は、全3回のうちの3回目です。 (1)を読む / (2)を読む
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|日本酒を楽しむ若い飲み手が増えていると感じます

―お酒をおいしくいただくために、知っておきたいことはありますか。

鈴木/最初から最後まで日本酒だけで通す酒の席は少ないと思いますが、もしそのような席に招かれたとしたら、お酒の順番を覚えておくといいです。一般的に、和食の場合はお刺身や酢のものなどさっぱりとした料理から始まります。さっぱりとした料理には、香りを楽しめるすっきりと上品な味わいの吟醸酒がよく合います。次に、煮物などのこってりとした料理に移りましたら、お酒もうまみがあってコクやふくよかさなどが特徴の純米酒系に変えていく。料理に合わせて、すっきりとしたお酒から、うまみとコクの強いお酒へ、という順です。

―なるほど、吟醸酒から純米酒へ、ですね。わたしは貧乏性なもので、つい、いいもの、おいしいものはあとで・・・と思いがちなのですが、繊細な味が特徴の吟醸酒こそ、酔いが回る前に香りと上品な味を楽しまなくてはもったいない。「吟醸酒から始める」そう覚えておきます。
ところで、県外のお酒ファンから「吟醸王国」とも呼ばれる静岡ですから、地元静岡でも県内の地酒はたくさん飲まれていると思っていいですか?


鈴木/残念ながら、地元での消費量は多くありません。以前は、県内で消費される日本酒のうち県内の酒蔵のお酒の消費量は約14%程度といわれていました。最近では少し伸びていると思いますが、まだまだ少ないはずです。理由はいろいろありますが、ひとつには、静岡県は日本の真ん中に位置し物流が発達しているため、全国に出荷しやすいという地理的条件も大きいのではないかと思います。関東や関西などの大きな商圏にも、すぐに出荷できますから。

―全国から評価されている静岡のお酒を、地元の人にもっと飲んでほしいですね。
 この20年間で静岡のお酒を取り巻く環境に変化を感じますか。


鈴木/最近では、出張などで静岡の居酒屋にいらした県外のお客様が、ひとつの銘柄で吟醸酒から純米酒までそろっている棚を見て「さすが静岡、吟醸王国ですね」といわれることがあります。そこまで認知されてきたのだと、うれしく思いました。
もうひとつ、日本酒にネガティブな先入観のない若い飲み手が増えてきたことでしょうか。わたしが20代の頃は、日本酒には「おやじのコップ酒」というイメージありました。お酒が好きというだけで「強いんですね、酒飲みですね」といわれたものです。日本酒につきまとっていたそのようなネガティブなイメージが薄れてきて、最近のお酒の会では、先入観なくお酒に興味を持った若い参加者が増えています。

17.しずおか地酒研究会主宰/鈴木真弓氏(3)17.しずおか地酒研究会主宰/鈴木真弓氏(3)
2009年2月、県内大学生の有志が地域について学ぶ学外講座「天晴れ門前塾」において、鈴木さんが
講師を務めた地酒ゼミで青島酒造さんを見学。その後、「地酒を愛する大人たちのスマートな呑み方を
参考にしてもらいたい」と、学生たちとしずおか地酒研究会会員とが交流する席を設けた。


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2011年5月、静岡県立美術館小谷元彦展オープニングパーティーにて、県美学芸員の依頼を受けて
鈴木さんが企画した、選りすぐりの静岡吟醸のテイスティングコーナー。静岡吟醸の美味しさに驚
いた芳賀徹館長からは「いつもワイン専門だが、今日はワインは要らない」という言葉も。「さま
ざまな場所でいいお酒との出会いのコーディネートをしていけたら」と鈴木さん。

|書き手としても、静岡のお酒への感動を忘れないでいたい

―【日刊いーしず】で連載中の鈴木さんのコラムタイトルは「杯は眠らない」です。お酒のイメージが膨らむ素敵なタイトルだと思いました。今回のコラムでは読者にどんなことを伝えたいですか。

鈴木/わたしは、日本酒のことや静岡のお酒についてまだまだ知らない方が多いはず、と思っています。わたしのコラムをきっかけとして、読者のみなさんに日本酒や静岡のお酒に興味を持っていただけたらうれしい。そして、機会があれば実際にお店で静岡のお酒を飲んで、「静岡のお酒は本当においしいなぁ」と感動してもらえるといいですね。
わたし個人としても、25年間にわたって静岡のお酒に関わってきて、自分自身が最初の頃の感動を忘れかけているなと感じます。わたしも一旦ここでリセットして、お酒に対して新鮮な気持ちで向き合う、いいきっかけにしていきたいと思います。

―わたしも、一読者として静岡のお酒の魅力を再発見できることを楽しみにしています。今日はありがとうございました。


▼鈴木真弓さんのコラム 「杯は眠らない」を読む
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Posted by eしずおかコラム at 2013年01月28日12:00 | 17.鈴木真弓さん
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