25.NPOグリーンズ理事/小野裕之氏(2)

2013年11月18日12:00
今月の物語の主人公は・・・
小野 裕之(おのひろゆき)さん

25.NPOグリーンズ理事/小野裕之氏(2)

小野裕之 プロフィール
おのひろゆき。greenz.jp 副編集長、NPO法人グリーンズ理事。84年、岡山県生まれ。中央大学総合政策学部在学中に出会った“Sustainable Living”の考え方と、それを教えてくれた恩師に感銘を受ける。卒業後、ベンチャー企業にて新規事業の開発や大手企業のWebプロモーションの企画制作を行い、09年より、あなたの暮らしと世界を変えるグッドアイデア厳選マガジン「greenz.jp」に参加。11年、副編集長に。12年にはgreenz.jpのNPO法人化にともない理事就任。編集・企画のほか、事業開発やパートナー企業とのコラボレーション業務など、ビジネス面を担当。

※聞き手は、(株)しずおかオンライン代表/海野尚史さんです。
※この記事は、全3回のインタビューのうちの2回目です。 
≫1回目はこちら

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|身近な社会を良くするために。ほしい未来は、自分でつくる

-グリーンドリンクス静岡を主催している井上泉さんから、小野さんのインタビュアーとしてご指名をいただきました「しずおかオンライン」の海野です。今日は、よろしくお願いします。

小野/よろしくお願いします。

-最初に打ち明けておきますが、実は今回のお話をいただくまで、「グリーンズ」を知りませんでした。それで、あわててネットでアクセスしてみたというのが正直なところです。すみません。

小野/いえいえ(笑)

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-9月にNPOグリーンズ代表理事の鈴木奈央さんが出版した『「ほしい未来」は自分の手でつくる』 (星海社新書) を読みました。それまで“ソーシャルデザイン”と“まちづくり”の区別もよくわかっていませんでしたが、本を読んで、わたしたちの身近な社会を良くしたいという方向は同じでも、その背景やアプローチが違うことがわかりました。実は、まちづくりについては、これまでちょっと避けてきたところもあったんです。

小野/魔物が棲んでます(笑)。

-ぼくが過去に関わったまちづくりの集まりでは、最初に予算、つまり税金ありきで、それを使ってなにをやるか、という話が多かったんです。参加者にも当事者意識が感じられなかったり、誰もリスクを取ろうとしないし。せっかく動き始めたプロジェクトも、年度が変わると方針も変わってしまったり。対処療法では、花火は打上げられても、長くは続きませんよね。花火の後に、まちに魅力が増したとか、人が戻ってきた実感もなくて。いつの間にか避けるようになっていました。

小野/はははは(笑)。

-そんなこともあって、まちづくりと似た匂いを感じた『「ほしい未来」は自分の手でつくる』も、最初は疑いながら読み始めたんです(笑)。そしたら、とても面白かった。読み進めるうちに、ぼくはすっかり「グリーンズ」のファンになりました(笑)。本当です。

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小野/よかった(笑)。でも、面白いでしょ!?

-はい。そんな「グリーンズ」初心者のわたしが、今日は会場のみなさんを代表して、小野さんにいろいろな質問をぶつけてみたいと思います。

小野/なんか、ラジオみたいですね。ははは(笑)。

|「プロデューサー」になりたい。そこから会社や仕事を選びました

-最初に、小野さんが「グリーンズ」に参加するようになったきっかけを教えてください。前職の仕事内容もあわせて、お話しいただけますか。

小野/はい。え~と、みなさんも同じだと思いますが、大学進学を考える時が「自分の将来の夢」を考える最初のタイミングでした。その時に思い浮かんだ職業が、新聞記者と編集者です。メディアや言葉に関わる仕事で、いろいろな人に取材できるのは楽しそうだと。大学に入ってからは、新聞記者よりも雑誌や広告を作る仕事が自由で楽しそうに思えて、フリーペーパーや雑誌、ウェブマガジンなどのメディアを立ち上げてみたい、と考えるようになりました。

-高校、大学時代を通して、メディアに興味があったのですね。それも既存メディアで働くのではなく、自分で新しいメディアを立ち上げたいと。

小野/でも、デザインをしたり、何かを表現するということは自分にはできないとも感じていて。自分に向いているのは、メディアの仕事で生活できるようにすること、それから、自分たちのメディアで社会的なインパクトを与えるためには、やっぱりお金が回転しないと行き詰まるだろうと考えました。それで、そういう仕事って何だろうと、いろいろな人の経歴を調べたことがあったんです。その時に発見したのが「ビジネスプロデューサー」っていう肩書きです。「あっ、自分の思い描いている仕事はこれだ」と思いました。

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-単なる営業ではなくて、プロデューサーなんですね。

小野/コンセプトを作って、みんなが向かう方向を定めて、必要な人材を手当てしたり、お金が足りなければ資金調達したり。そのような仕事が、自分に向いていると思いました。

-なるほど。

小野/では、プロデューサーになるためには、なにが必要か。事業計画書を作ったり、必要な人材を集めるには、人を口説く力も必要だなと。どこでそのようなスキルが身につくだろう、と考えながら就活したのですが、その時に「ここなら」と思いついたのが、リクルートという会社です。でも、リクルート本体の大きな組織で、住宅情報や結婚情報などの広告営業をすることにはピンときませんでした。それよりも、リクルート出身者が立ち上げたベンチャー企業なら自由に働けそうですし、学ぶことも多いと思って、リクルート出身者が立ち上げた会社をしらみつぶしに調べて、広告の制作や編集制作などを手がけるコンテンツという会社に入社しました。

-はい。

小野/入社1年目から「新規事業をやりたい」と社内に対して意思表示していたら、2年目に、ある役員が「一緒に新規事業部を立ち上げよう」といってくれて、チャレンジさせてもらいました。でも、業界のことも、ビジネスとは何かもわかっていないのに、上手くいくはずないですよね。結局、新規事業は上手くいかなかったのですが、この時に、ゼロから事業を立ち上げることがどういうことか、とても勉強になりました。

-どんな事業だったのですか。

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小野/新しいコンセプトの求人情報サイトです。

-そこからどのようにして「グリーンズ」にたどり着いたのですか。

小野/ぼくは、大学時代に環境政策などを研究していたこともあって、前職のころから「greenz.jp」の読者だったんです。「greenz.jp」は、お金にはならないけど社会にとって価値があると思える活動を、きちんと取り上げている唯一のメディアだと思って興味をもって見ていました。そしたら、いまリトルトーキョーhttp://littletyo.com/)で一緒のメンバーが運営している「日本仕事百貨」http://shigoto100.com/)という求人サイトに「グリーンズ」の求人情報を見つけて、それで応募して採用されました。

|グリーンズは今、いいバランスで仕事ができています

-「グリーンズ」のメンバーの役割を教えていただけますか?

小野/現在の「グリーンズ」は、経営に携わる3人と、編集アルバイト女性1名、経理のパートさん1名の5名で運営しています。代表の鈴木奈央は、38歳のパパです。日本の社会活動家や選挙などの、お金になりづらい分野を担っています。編集長の兼松佳宏は34歳、秋田県出身なんですけど、東京では子育てできないといって、今は鹿児島に引っ越して、デザイン面と英語で世界に向けた情報発信を行っています。基本的に、鈴木と兼松が、走り回る子どものように「わあ、わあ」と、いろんな新しいことをやろうとして、29歳のぼくの仕事は、それらのアイデアをまわりの人に理解してもらえるように、ひとつの物語として紡いで、「これは、世の中にたいして、こんな価値がありますよ」と提示することです。企業や行政に対して、なぜこのプロジェクトに予算をかける価値があるのか、説得力のある商品に仕上げてプレゼンテーションしています。

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-みなさんとても個性的ですね。それに組み合わせもよさそう。

小野/3人は、かなりいいバランスで仕事ができていると思います。それから、25歳の編集アシスタントのアルバイトの女の子は、編集長の兼松と一緒に毎日2本の記事の配信を担当しています。どの記事をどのライターさんに依頼するかをアサインして、それらの取材から配信までのスケジュール管理もアシスタントさんの仕事です。すごく大事なポジションです。もうひとり、週2~3回来てくれるお母さんのような存在の経理・管理面のパートさんが一人いて、あわせて5名で運営しています。

-5名のスタッフは、「グリーンズ」の仕事だけで食べているのですか?

小野/はい。僕自身は満足していますが、もっと良い条件にしていきたいですけどね(笑)。

-「グリーンズ」の認知も上がって、スポンサーも増えていますし、新しいスタッフを採用することもあると思います。「グリーンズ」の採用基準を教えていただけますか?

小野/やるきさえあれば誰でも(笑)と、いいたいところですが、ぼくらは、経営者候補しか採用しません。

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-それは、どうして?

小野/ぼくは7人目の社員として入社していて、一時期9人まで増えたことがあるんです。「グリーンズ」の運転資金や自分たちの生活資金を稼ぐために、「グリーンズ」とは関係ないウェブサイトの制作案件なども受注していました。制作案件が増えるにしたがって、身軽さを売りにしていた「グリーンズ」は、いつのまにか人が増えて、社内調整に時間がかるようになったり、そもそも自分たちはこういう仕事をやりたくて集まったわけじゃない、と疑問が沸いてきたりして。

-それで、どうされたんですか。

小野/「これじゃまずいよね」となって、「グリーンズ」の価値が活かせる仕事以外は断わる決断をしたという経緯があります。そんな反省もあって、今は、アウトソーシングできる仕事は、すべて外にお願いするようにしていて、どうしてもアウトソースできない仕事が、経営することだと考えています。

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Posted by eしずおかコラム at 2013年11月18日12:00 | 25.小野裕之さん
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