32.映画『tig☆hugちぐはぐ』 監督/渡辺喜子氏(1)

2014年08月07日12:00
今月の物語の主人公は・・・
映画『ちぐ☆はぐ』 監督・渡辺喜子(わたなべよしこ)さん

32.映画『tig☆hugちぐはぐ』 監督/渡辺喜子氏(1)
 静岡県富士市出身、東京在住。 映画監督、女優。 2005年、初の長編映画『貝殻』を脚本&監督、2013年2作目の長編映画『tig☆hugちぐはぐ』を脚本&監督。今はまだ無名ですが、 お茶の間でも、世界でも知られる“実力派”となって、 いい作品を沢山世に産み出せるよう日々精進致します。 賛否両論様々なご意見に支えられ自分にしかできない唯一無二な表現を目指しています。 好きな映画監督:ケン・ローチ、北野武、深川栄洋。好きな役者:ロバート・カーライル、西島秀俊、片岡礼子。


映画『tig☆hugちぐはぐ』 公式ホームページ
映画『tig☆hugちぐはぐ』 予告編
映画『tig☆hugちぐはぐ』 facebook

 上映予定
静岡シネ・ギャラリー
期間:8月9日(土)~22日(金)
レイトショー上映


※聞き手は、(株)しずおかオンライン代表/海野尚史さんです。
※この記事は、全3回のインタビューのうちの1回目です。
≫インタビュー2回目はこちら
≫インタビュー3回目はこちら

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 「今の自分は何やってんだろう」という思いから、一か八か「会社を辞めて、今、自分にできるすべてをかけて映画を作ろう」と、二作目となる映画『tig☆hugちぐはぐ』を撮った富士市出身の映画監督、渡辺喜子さん。30代の半ばになったのに結婚の予定もないし、自分の居場所だと思える会社もなかったという渡辺監督に、この映画に込めた思いを語っていただきました。
* * * * * *
 

|自分にうそをついて生きていないか?

映画『tig☆hugちぐはぐ』 の公開、おめでとうございます。今日は、渡辺監督がこの映画にこめた思いをお聞きしたいと思います。よろしくおねがいします。

渡辺/よろしくお願いします。

32.映画『tig☆hugちぐはぐ』 監督/渡辺喜子氏(1)


-単刀直入に伺いますが、映画の冒頭で主人公のおじいちゃんが「おまえは他人の選んだ窮屈な服を、一生着続けるか?それとも、自分にぴったりの服を着て生きていくのか」という言葉を主人公に投げかけるシーンがあります。

渡辺/よく覚えていますね(笑)。

-もちろんです。今日のために、しっかり観させていただきましたから(笑)。ストレートに、この言葉が映画『tig☆hugちぐはぐ』のテーマだと思ってかまわないですか?

渡辺/そうですね。わかりやすく言うと「自分にうそをついて生きていないか?」という問いかけでもあります。

-はい。

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渡辺/たとえば、自分が好きなTシャツは、着心地がよくて、自然とその服を着たくなるじゃないですか。そんなイメージに近いです。

-安心できて、素の自分でいられる状態ですね。

渡辺/そうですね。それが仕事になっている人もいれば、趣味なのかも分からないですけど、それが何であれ、自分に素直な生き方ができたらいいな、と思うんです。映画の主人公である相葉武にとっては、映画監督として歩むことが彼にぴったりの生き方なんじゃないかと。

-…ということですね。

渡辺/でも、自分がぴったりだと思っていた服も、体型が変わってしまえばあわなくなってしまいますし、あこがれの服が着たければ、自分がその服にあわせて体型を変えなければならない。

-はい。

渡辺/それが、努力して体型を変えてあこがれの服を着てみたら、思っていたほどには着心地がよくない場合もある。自分にぴったりの服を着るのは、想像以上にたいへんなことでもある、と思います。

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-自分の中には、ずっと変わらない部分と、変化していく部分が同居していますからね。「自分にぴったり」を探すことはもちろんですが、その状態を維持し続けることのほうが、難しいのかもしれません。

渡辺/それらも含めた大きな枠組みで、「自分にぴったりの服を着ていますか?」と、みなさんに問いてみたかったんです。

-この映画をみた方は、自問自答しますね。それで、心のどこかで「自分にうそをついて生きてきたとは思わないけど、こんなはずでもなかった…」なんて思う人もいるかもしれない。それとも、ぼくだけかな?

渡辺/はははは(笑)。


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|「本当に自分がやりたい事」を現実に叶えてほしい

-主人公の武は37歳なんですけど、その年齢って、一度立ち止まって、ふっと自分の人生を振り返ってしまうタイミングですよね。

渡辺/そうですね。

-社会に出て無我夢中にがんばってきた人が、一息ついて、このままでいいのか、それとも路線を変えるべきか…。何かを変えるなら、いましかないんじゃないか。そんなことを考える年齢なんだと思います。

渡辺/はい。

-後になってみれば、何かを変えるのに遅すぎるなんてないとわかるのですが、その時はそんな余裕がなくて、考えすぎてしまう。

渡辺/なるほど。

-そう考えると、37歳は絶妙な設定だな、と思いました。でも、自分の着心地のいい服にパッと着替えられる人は、相当準備のいい人だけです。ほとんどの人は、着替えたくてもどこから一歩踏み出したらいいのかわからないんじゃないかな。

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渡辺/20代の若者であれば、そのズレに気づいた時、勢いで軌道修正することもできますよね。でも、30代後半になったら、もう一度リスクを取ってチャレンジするか、今の安定を持続していくか、迷ってしまいます。 そんな時、一歩踏み出して「本当に自分がやりたい事」を現実に叶えてほしい。

-一回きりの人生だから「自分の人生を生きろ」と。


|ちぐはぐな状態に気づけるのは自分自身だけ

渡辺/ただ、他人は漠然と「この人は幸せそうだな」「夢が叶えられていそう」とか勝手に想像しますが、本当のことは本人にしかわからないんです。

-はい。

渡辺/「本当に自分がやりたいこと」と「今やっていること」が、どこかでズレてしまって、ちぐはぐな状態になってしまっても、それに気づけるのは自分自身だけ。幸せそうな顔をしていれば、他人は誰も気づきません。

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-ボタンを掛け違えてしまった着心地の悪さに気づいているのは自分だけだと。でも、まわりから「すてきですね」とか「よく似合ってますよ」などといわれると、つい「ありがとう」と答えて、明日も着てしまうんですよね。

渡辺/それに、何かのきっかけで、自分にぴったりの服はこれじゃなかったかも…と気づいても、その声には耳を傾けたくない気持ちもどこかにある。この映画では、そんな自分が聞きたくない声にも真摯に向きあってみましょう、ということも伝えたかったんです。そこで立ち向かわないと、今の自分から何も変われないじゃないですか。

-そうですね。

渡辺/わたしにできることは、そんな人たちの心に映画を通じて揺さぶりをかけること。わたしの映画を観て、自分に素直な生き方に一歩踏み出すきっかけになってほしい、そういう想いも込めてこの作品を書きました。

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Posted by eしずおかコラム at 2014年08月07日12:00 | 32.渡辺喜子さん
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