32.映画『tig☆hugちぐはぐ』 監督/渡辺喜子氏(3)

2014年08月21日12:00
今月の物語の主人公は・・・
映画『ちぐ☆はぐ』 監督・渡辺喜子(わたなべよしこ)さん

32.映画『tig☆hugちぐはぐ』 監督/渡辺喜子氏(3)

 静岡県富士市出身。映画監督、女優。2013年2作目の長編映画『tig☆hugちぐはぐ』を脚本&監督。

 上映予定
静岡シネ・ギャラリー
期間:8月9日(土)~22日(金)
レイトショー上映

映画『tig☆hugちぐはぐ』 公式ホームページ
映画『tig☆hugちぐはぐ』 予告編
映画『tig☆hugちぐはぐ』 facebook

※聞き手は、(株)しずおかオンライン代表/海野尚史さんです。
※この記事は、全3回のインタビューのうちの3回目です。
≫渡辺さんのプロフィールと1回目のインタビューはこちら
≫インタビュー2回目はこちら


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|誰でも、きっと必ず勝てる土俵がある。

-映画の中で、年下の先輩であり、ライバルである川上は、人物としては問題ありですが、表現者としてのセンスは持っている人物として描かれています。

渡辺/はい。

32.映画『tig☆hugちぐはぐ』 監督/渡辺喜子氏(3)


-一方、主人公の相葉武は、真面目でやる気では誰にも負けないけど、センスに自信がない。渡辺監督自身も、武と同じような思いを抱えていたのでしょうか。

渡辺/抱えていましたね。若くはないし、体力もない、センスに自信もない、そんな武やわたしみたいな人は、監督の道をあきらめなくちゃいけないのか、と自問したのです。

-ええ。

渡辺/でもあきらめられなかった。そこから「なら、どうすれば自分たちでも勝てるのか」「この状況に、どう立ち向かえばいいのか」と考え、それを描いたつもりです。

-自分たちの力が発揮できる土俵があるはずだと。

渡辺/美大生の時に美術予備校の講師のアルバイトをしたことがあって、こんな経験をしたんです。あるときにクラスの生徒30人前後の描いた作品を3人の先生が講評し、一番いい絵を決めるという場に立ち会いました。

32.映画『tig☆hugちぐはぐ』 監督/渡辺喜子氏(3)


渡辺/その時に、「この絵はいいね」と、みんなが言う時にいくつかの評価ポイントがあることに気づいたんです。
ひとつは、明らかにセンスのある絵。二つ目は、技術はつたないけど、描き手の情熱が伝わってくる絵。三つ目は、受験には通らないけど、魅力のある絵。それぞれにいいんです。

-なるほど。

渡辺/この時の経験が、一口に「いい」というものの中に、いろいろな価値感が存在することに気づくきっかけになりました。ですから武にもわたしにも、どこかに必ず勝てる土俵がある、と思えたのです。

32.映画『tig☆hugちぐはぐ』 監督/渡辺喜子氏(3)



|ないものねだりなんでしょうね。

-東京と地方の対比も興味をひかれました。東京に出て行った友人を、地方の人は「いまでも自分の夢を追いかけているうらやましい人」と、こころのどこかでみてしまう。映画の中で、武の友人豊田は、夢を求めて東京に出て行った武に、自分の夢を託しています。

渡辺/そうですね。

-一方で、地方に残り、結婚して家庭を持つ友人が、武には幸せそうにみえる。お互いに映っている姿のズレがおもしろい。

渡辺/わたし自身も、「東京で映画を作っている」というと、字面的には「いいね」っていわれます。でも、地元の友達をみると、温かい家庭があって幸せそうだな、って思うわけですよ。お互い、ないものねだりなんでしょうね。もしかしたら、いつまでもそうかもしれない。

32.映画『tig☆hugちぐはぐ』 監督/渡辺喜子氏(3)


-その豊田が「いろいろあんだよ。俺だってこんなになるとは思わなかったよ」とつぶやくシーンには、リアリティを感じました。

渡辺/実際は、自分の足で立っている豊田のほうが、大人なんです。


|その瞬間に、幸せがあるんだ

-武も渡辺監督も無事に2作目を撮ることができて、やりたいことが実現できましたね。

渡辺/そうですね。でも、常に自分の中でこだわっているのは「これでいいのか」という問いです。田舎からでてきて、自分のやりたいことが実現できたとしても「おまえはそれで本当に幸せか」と問い続ける自分がいるんです。

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-それは、目標を達成することがおまえにとっての幸せなのか、ということですか。

渡辺/今回撮影してみて、目標達成が幸せなんじゃなくて、それを目指している状態、プロセスこそが大切なんだと気づきました。

-はい。

渡辺/部屋にこもって、自分ひとりで書いた物語の映画を作る為に多くの人が集まってくれたり、人生の一部を使って演じてくれる役者さんがいたり、もっといいシーンにしようと現場で真剣に議論するスタッフがいたり…。その瞬間瞬間に、幸せがあるんだと気づきました。

-どんな状況でも「いまこの瞬間が幸せなんだ」と気づくことが大切なんですね。

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-最後に、静岡で毎日を一生懸命に暮らしながら、心の片隅で今も自分にピッタリの服を探し求めているひとたちにメッセージをいただけますか。

渡辺/「わたしなんか…」と思っているあなたにこそ、この映画を観てほしいです。そしてこの映画を観て、自分の人生に自信を持って映画館を後にしてくれたらうれしいです。

-今日はありがとうございました。

32.映画『tig☆hugちぐはぐ』 監督/渡辺喜子氏(3)


◆映画『tig☆hugちぐはぐ』 監督・渡辺さんへのインタビュー/完


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Posted by eしずおかコラム at 2014年08月21日12:00 | 32.渡辺喜子さん
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