35.オルタナティブスペース・スノドカフェ代表/柚木康裕氏(3)

2015年01月29日12:00
今月の物語の主人公は・・・
オルタナティブスペース・スノドカフェ代表
 柚木康裕
(ゆのきやすひろ)さん


35.オルタナティブスペース・スノドカフェ代表/柚木康裕氏(3)

 1965年、静岡市清水区生まれ。リサイクルブティック・スノードール、オルタナティブスペース・スノドカフェ経営。現在も会社経営とともに様々な人が出会う「場」作りを通して、地域から発信するアートの支援活動を行っている。
リサイクルブティック・スノードール
洋服をめぐる物語。by スノードール


※聞き手は、(株)しずおかオンライン代表/海野尚史さんです。
※この記事は、全4回のインタビューのうちの3回目です。
≫柚木さんのプロフィールと1回目のインタビューはこちら
≫インタビュー2回目はこちら
≫インタビュー4回目はこちら


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|『DARA DA MONDE』創刊のきっかけ

-2012年には、芸術批評誌『DARA DA MONDE』(ダラダモンデ)を創刊しましたね。

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柚木/2006年にカフェを再開したことで、直接顔をあわせて会話することのおもしろさや大切さを、あらためて実感しました。一方で、場所と時間に拘束されるという制約が課題として浮き彫りになってきました。この解決策としてはじめたのが、雑誌というメディアです。

-雑誌は場所も時間も飛び越えて、人から人へと伝わっていきますからね。

柚木/『DARA DA MONDE』の創刊には、もうひとつきっかけがありました。それは2011年の東日本大震災です。震災直後のことですが、世の中全体が自粛ムードに包まれましたよね。聞こえてくるのは中央からの大きな声と「がんばろう日本」というかけ声ばかり。そのほかの小さな声、多様な意見がかき消されて、公演などの芸術活動も自粛されました。

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柚木/かき消された声の代表が、中央に対する地方の声だったと思うんです。地方には地方に暮らす人の声があるはずですし、地方でも芸術活動は行われている。こんなときだからこそ地方の声を伝えたい、そんな気持ちに後押しされて『DARA DA MONDE』の創刊を決めたんです。


|予想以上に深く掘り下げられた内容の雑誌ができました

-2014年5月には3号目が発行されました。順調に続いていますね。

柚木/ありがとうございます。SPACの広報誌の編集などに携わっている、西川泰功君(コラムはこちら)に参加してもらえたのはとてもラッキーでした。西川君のおかげで、劇評や展評、アーティストのインタビューなど、ぼくの予想以上に深く掘り下げられた内容の雑誌ができました。

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-編集体制は?

柚木/ぼくと西川君、デザイナーの3名体制です。西川君とは年中会って、その時々にお互いが興味があることや、次に何をやろうかということをしゃべっています。それがすごく楽しいんです。

-いいですね。


|『DARA DA MONDE』発行にどんな反応がありましたか

柚木/最新号では「アートルート」という切り口で、最近、地方で盛んに行われている芸術祭をとりあげました。実際に芸術祭の開催されている町に人が移動するというのは、新しい道をつくることになりますし、芸術の文脈の中に新しいルートをつくることでもあるわけです。

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-どんなルートを取り上げたのですか?

柚木/2013年は、山梨県甲府市で開催されている「こうふのまちの芸術祭」の主催者やアーティストの人たちとつながり、県道52号線を実際に行き来しながら交流しました。イベントのオープニング前には甲府市と静岡市のスタッフが集まり、「52号線アート会議」というイベントをスノドカフェで開催しました。地方と地方をアートでつなぐ、そんな取り組みです。

-『DARA DA MONDE』を発行して、どんな反応がありましたか

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柚木/印刷部数は1000部ですし、完売しているわけでもないので、それほど広がりはありません。ただこの雑誌によって、静岡のアーティストだけでなく、地方の芸術シーンで埋もれていた人材が可視化できたと思っています。葵タワー(静岡市葵区)の戸田書店さんからは繰り返し追加注文が入って100部以上も売れたんですよ。


|手応えは感じています。

-静岡の芸術に対して、関心を持っている人がそれだけいるということですね。

柚木/そうなんです。そのことに自分たちが一番驚きました(笑)。創刊号の巻頭では、アーティストやギャラリスト、美術館の学芸員、SPACのスタッフなど、ぼくの知り合いのアート関係者に集まっていただいて座談会を企画しました。

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-はい。

柚木/参加者たちはそれぞれが、何となく知っているけど話したことはないという具合でした。結果的にこのときはじめて全員がつながったのですが、みんな地元にいるメンバーで、アートという共通言語があるので、座談会はとても盛り上がりました。

-楽しそうなのが想像できます。

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柚木/実は座談会を開いた翌年に、参加者の一人だった川谷承子さん(静岡県立美術館学芸員)の企画で、この時のメンバーが中心になった現代アート展「むすびじゅつ」が実現したんです。その展覧会を見た静岡大学教授の白井先生から声をかけていただき、今度はぼく自身が静岡大学アートマネジメント力養成講座の講師として関わるようになりました。創刊号の座談会が、このようにつながっていったことに本当にびっくりしています。

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-雑誌を通じて出会い、ネットワークが生まれ、そこでの刺激が新たな創作活動につながる。そんな循環が生まれているのですね。

柚木/手応えは感じています。同時に、いままで自分の興味だけをきっかけにしてプライベートに活動してきましたが、静岡大学アートマネジメント力養成講座に関わったころから、芸術がもつ公共性を意識するようにもなりました。これは大きな変化でした。

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Posted by eしずおかコラム at 2015年01月29日12:00 | 35.柚木康裕さん
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