今月の物語の主人公は・・・
ガイアフローディスティリング株式会社代表取締役・中村大航(なかむら たいこう)さん
1969年、静岡市清水区生まれ。2000年、34歳で、祖父の代から続く家業の精密部品製造会社の代表に就任。11年間経営に携わった後、2012年1月、再生可能エネルギー事業での起業を計画してガイアフロー株式会社設立。同年6月、スコッチの産地として知られるスコットランド・アイラ島の蒸溜所巡りの旅をきっかけに、ウイスキーを自らの手でつくることを決意。帰国後、ガイアフロー株式会社の事業目的をウイスキー事業を核に再構成。2014年ガイアフローディスティリング株式会社を設立、2016年、ウイスキー製造免許を取得し、オクシズ玉川地区(静岡市葵区)に、ウイスキー工場「ガイアフロー静岡蒸溜所」を完成させる。2016年、静岡蒸溜所で製造するウイスキーを樽ごと販売する「静岡プライベートカスク2017」は、販売1日で完売。全国のウイスキーファンから注目を集めているほか、観光や地域振興の面からも大きな期待を寄せられている。
◆ガイアフロー株式会社 HP
◆GAIAFLOW BLOG
※聞き手は、(株)しずおかオンライン代表/海野尚史です。
※この記事は、全4回のインタビューのうちの1回目です。
≫第2回 静岡で世界に認められるウイスキーを
≫第3回 価格競争からオンリーワンの世界へ
≫第4回 全国からオクシズへ
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静岡市の市街地から車で約40分。南アルプスの南麓、緑豊かなオクシズ玉川地区(静岡市葵区)に誕生したウイスキー工場「ガイアフロー静岡蒸溜所」が、いよいよクラフトウイスキーの製造に乗り出しました。静岡蒸溜所で製造したニューポット(ウイスキーの原酒)を樽ごと販売する樽オーナー制度も大好評。34歳で、家業の精密部品製造会社の社長に就任した中村大航社長が、さまざまな新規事業を模索した末にたどり着いたウイスキー事業。どのような経緯でウイスキー製造を始めるに至ったのか。そして、ウイスキー事業の魅力や可能性、地域への思いについてお聞きしました。
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|第1回 全国の候補地から選んだ安倍奥・玉川
- 海野
- 今日は、中村社長がウイスキー事業を立ち上げた経緯やウイスキー事業の魅力、可能性などについてお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。
- 中村
- よろしくお願いします。
- 海野
- 明るくて開放的なデザインですね。ガイアフロー静岡蒸溜所の工場設備は完成しているのですか?
- 中村
- いえ、まだまだです。設置したばかりの機械もありますし、これから改良していくものもあります。
- 海野
- 窓ガラスが大きくて、工場の中にいながら安倍奥の自然環境との一体感が感じられます。それから木がたくさん使われているんですね。工場なのに柔らかな印象です。
- 中村
- ウイスキー工場ですが、見学者を迎え入れることを前提に設計しています。見学者が蒸溜所の中を歩きながら、ウイスキーの製造工程を見学できるようになっています。
- 海野
- 建築設計は、アメリカ人の建築士と聞きました。
- 中村
- 静岡市在住のアメリカ人建築士、デレック・バストンさんの設計事務所です。シンプルな日本の和モダンとアメリカ・ウェストコーストの木造建築のテイストをミックスしたイメージ、というコンセプトで依頼しました。床や壁に使用している木材は、地元の木材組合に調達していただいた「オクシズ材」です。完成した工場は、私の期待以上のものになりました。
- 海野
- スタッフは何名ですか?
- 中村
- 現在は8名です。製造が3名、営業事務5名。一応役割はありますが、お互いに助け合いながら仕事をしています。
- 海野
- 静岡蒸溜所の生産規模は?
- 中村
- フルに生産して最大で年間30万リッターほどです。これはスコットランドにある小規模蒸溜所とほぼ同程度。初年度は5万リッターに満たない量から始めて、2年目は10万リッターに。試行錯誤しながら、徐々に生産量を増やしていく計画です。
- 海野
- ウイスキーは蒸溜後すぐに出荷できるわけではなく、樽で熟成させる期間がありますね。
- 中村
- 樽で最低3年は寝かせます。基本的には年間の生産計画を立てて、決まった量を作っていきます。
- 海野
- ウイスキー工場の立地に、この場所(オクシズ玉川)を選んだ理由は?
- 中村
- ウイスキー工場の条件としては、水が豊富で、自然環境に恵まれて、空気がきれいなこと。そして工場建設用の平地が確保できることが必要です。最初は、静岡県にこだわらず、山梨、長野含めて、条件にあう場所を全国で探しました。
- 海野
- そうでしたか。
- 中村
- 古い日本酒の蔵を改装するとか、既存のウイスキー醸溜所の稼働していない時期に設備を貸してもらって造るとか、さまざまな選択肢を検討していたのですが、最終的に、地元の静岡市で希望に合う工場用地がみつかりました。
- 海野
- どのような場所ですか。
- 中村
- 南アルプスからの良質な水が豊富で、自然や茶畑に囲まれた、静岡らしい自然に恵まれた環境です。しかも、静岡市は自分の生まれ育った場所。ここに出会えたことは、とても幸運だったと思います。