44.ガイアフロー静岡蒸溜所/中村大航氏(3)

2017年09月27日12:00
今月の物語の主人公は・・・
ガイアフローディスティリング株式会社代表取締役・中村大航(なかむら たいこう)さん

44.ガイアフロー静岡蒸溜所/中村大航氏(3)
 1969年、静岡市清水区生まれ。2000年、34歳で、祖父の代から続く家業の精密部品製造会社の代表に就任。11年間経営に携わった後、2012年1月、再生可能エネルギー事業での起業を計画してガイアフロー株式会社設立。同年6月、スコッチの産地として知られるスコットランド・アイラ島の蒸溜所巡りの旅をきっかけに、ウイスキーを自らの手でつくることを決意。帰国後、ガイアフロー株式会社の事業目的をウイスキー事業を核に再構成。2014年ガイアフローディスティリング株式会社を設立、2016年、ウイスキー製造免許を取得し、オクシズ玉川地区(静岡市葵区)に、ウイスキー工場「ガイアフロー静岡蒸溜所」を完成させる。2016年、静岡蒸溜所で製造するウイスキーを樽ごと販売する「静岡プライベートカスク2017」は、販売1日で完売。全国のウイスキーファンから注目を集めているほか、観光や地域振興の面からも大きな期待を寄せられている。

ガイアフロー株式会社 HP
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※聞き手は、(株)しずおかオンライン代表/海野尚史です。
※この記事は、全4回のインタビューのうちの3回目です。
≫第1回 全国の候補地から選んだ安倍奥・玉川
≫第2回 静岡で世界に認められるウイスキーを
≫第4回 全国からオクシズへ


・・・・・・・・・・・・・・・

|第3回 価格競争からオンリーワンの世界へ
海野
アイラ島でウイスキー事業へ参入することを決断してからの行動は早かったですね。その年(2012年)の1月に設立していた再生可能エネルギー関連企業の「ガイアフロー」を、帰国後、ウイスキーの輸入販売部門を軸に事業目的を変更。ウイスキーの輸入販売をスタートしていますね。

中村
はい。

海野
2014年にはウイスキー製造を目的としたガイアフローディスティリング株式会社を設立して、4年後には、オクシズ玉川(静岡市葵区)にガイアフロー静岡蒸溜所を建設。5年目の現在、ニューポット(ウイスキーの原酒)を作り始めています。

中村
外から見ると、5年で製造までスタートできたことに「早い」と感じられるかもしれませんが、自分の中ではもっと早いスピードでウイスキーを造り始めたかったです。新しいことを始めるときは、頭の中はどんどん先に走っていきますから。現実は、そのスピードに追いつかないじゃないですか。私自身は、ここまでずいぶん焦りながらやってきたんです。

海野
家業の精密部品製造から異業種のウイスキー製造へ新規参入して、不安はありませんでしたか?

中村
とにかく新規事業を立ち上げることで頭の中はいっぱいでしたし、ウイスキー事業は有望と信じられたので、迷いはなかったです。

44.ガイアフロー静岡蒸溜所/中村大航氏(3)
メルシャンの軽井沢ウイスキー蒸溜所から引き継いだ蒸溜釜。競売で落札した、歴史ある貴重な設備

海野
一方で、工場への投資、製造から出荷までの期間が長いことなど、資金繰りや製造にかかわるノウハウの確保、販路開拓など、ビジネスとして立ち上げることの難しさも想像してしまいます。

中村
新規参入が少ないということは、ビジネスとしての難しさがあるということだと思うんですね。裏を返せば、それは参入障壁が高いということ。ブルーオーシャンということですよね。

海野
そうですね。

中村
プレーヤーが少ないということは、そこで大きく勝たなくても、一定のファンをつかむことができれば、ビジネスとして成立させることができる。

海野
そちら側に入るのは大変だけど、そこに自分たちのポジションを確立することができれば、競争優位性は高いと。

中村
私自身は、性格的に売り込むことが苦手なんです。もっと言ってしまえば、売り込みをしたくない(笑)。自分の商品は、それを好きな人に買ってもらいたい。値段を下げて売り込むような商売から抜け出したかった。

44.ガイアフロー静岡蒸溜所/中村大航氏(3)

海野
精密部品の製造業は、価格競争の世界だった。

中村
そうです、そうです。工業部品は、コストダウンばかり要求される仕事でした。でも、ウイスキーではそういうことはありません。そもそも、マネしようと思っても同じウイスキーはできませんから。今は希少価値、人の手がかかっているモノへの価値が高まっています。

海野
付加価値、でしょうか。

中村
ウイスキーの世界は難しさはありますが、努力次第で自分たちの居場所を創ることができるところがいいんです。実際、ウイスキー蒸溜所の立ち上げを発表したら、とても話題になりましたし、注目していただけました。ただ、ここまでの規模の工場になるとは思っていせんでした。

海野
ご自身の予想以上?

中村
そうですね。縁と運、と言いますが、ここまでこれたのは、めぐり合わせだと思います。いろいろな人との出会いがあって、当初のイメージを超えたレベルでスタートを切ることができました。それに、 新東名の開通や、NHKの朝ドラ『マッサン』の放映も追い風になりました。

海野
すごい。いいタイミングでしたね。

中村
もっと難しい状況を想定していましたが、予想以上にうまく進むことができました。私ひとりではこんなに大きなことはできなかったと思います。

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香り、余韻、厚み。蒸気で蒸溜したもの、薪で蒸溜したもの、さらに樽での熟成方法で香りが変わるウイスキー

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Posted by eしずおかコラム at 2017年09月27日12:00 | 44.中村大航さん
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